密会背中合わせで瞑想をしていると、ずるりと悟飯が雪崩れて、落ちた。
すうすうと寝息を立てて、眠りにつく姿を見下ろす。
事情も知らず厳しい修行と称して乱暴に扱ったこともあった俺にどうしてこうも無防備な姿を晒せるんだろうか。
夢の中でも修行をしているのか言葉にもならない寝言の中に俺の名前を呼ぶ。
一昔前なら瞑想中に居眠りなんかしようものなら事情も聞かずにどやしていただろうな。
孫がいなくなって弟の子守り、俺との修行に加えて勉学も手を抜かない。
今ではそうやって思いやることができるくらいには俺もその無防備さにすっかり絆されていた。
『ピッコロさー!!』
遠くからでも良く通る母の声にそっと背中の悟飯の上にマントをかける。
『ピッコロさ、悟飯ちゃん来てねぇだか?』
『さぁな。修行は午前中で終えた。大方、森の中で虫でも見てるんじゃないか』
そうだか、と背中の幼子をあやしながら家へと折り返していくチチを見送ってマントの中を覗き込んだ。
春の暖かい温度の中、蝶も舞い込んでその頭にそっと止まる。
背中に当たる温度と呼吸の穏やかさを伝える振動が心地よい。
たまにはいいだろうと、そのまま寝かしてやって、瞑想の続きに戻った。
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背中に掛かる圧にそんなことを思い出す。
ずり落ちることもなく背中に乗る重さに、大きくなったな、と思った。
マントではもう隠してやれそうにない。
指を振って集めたぬいぐるみを積むように乗せてやる。
「ピッコロさーん!悟飯君来てませんかー?」
外から掛かる声に窓から顔を出した。
「さぁな」
昔と同じ言い訳に、踵を返すビーデルを見送る。
たまには独り占めも悪くない。
そんなことを考えながら、あの頃と同じように俺も目を閉じた。