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    azusa_n

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    モクルクとニンジャジャン7
    忍者成分不在だが6の流れだから許されたい。
    甘い(物理)けどほぼ甘く(ときめき)はない酒盛り回。
    書き手としてはとても楽しいので次もお酒飲む回続きます。

    #モクルク

    「どれから飲もうか、迷っちゃうね。」
    「迷っちゃいますね。困ったなぁ」
    「困っちゃうねぇ」
    ルークの家について買ったものやら借りたものやらを整理して一息ついて、ダイニングテーブルにありったけの酒と料理を広げた。
    二人並んで座って、全然困っていない顔で茶番を繰り広げる。

    「乾杯に合ってそうなものってありますか?」
    「そうだな、シードルとか? 瓶そのまま飲めるし、炭酸入りで比較的さっぱりしてるし、とりあえずビールってのと似たノリで飲むのに向いてると思うよ」

    赤色ラベルにリンゴの絵が描かれた小さい瓶の一つを渡す。
    回して開ける栓はすんなり開いた。
    「わあ、リンゴのいい香りがしますね。」

    「それじゃ」
    「「乾杯!」」

    零さない程度に瓶をくっつけ、乾杯の後、自分でも飲むが、正直ルークの反応の方が楽しみで仕方がない。

    まずは一口。
    控えめな量をごくんと喉に流し込んで。すぐにさっきより角度をつけて二口目を。
    これはかなり気に入ってくれたようだ。
    「っ、うまーい。疲れた身体にリンゴの甘酸っぱさと炭酸の爽やかさが効きますね。リンゴジュースの味。あの、これ、本当にお酒ですか?」
    「そうだよ。そんなに度数高くないけど。」
    ビール約5%よりも度数は低いから比較的安全ではあるが。

    レンジから出してきたばかりのポテトフライを食べて、シードルをぐいっと傾けて。

    「僕、今までビールと食べ物の『合う』がよくわからなかったんですけど、炭酸で油っこいのがなくなって美味しさが残るってことだったんですね。」

    「あの苦味自体を楽しむ人も多いが、まあビールは喉越しって言うし。
     ルーク、ビールの味苦手だからってちびちび飲んでたんじゃない?」
    「たしかにそうだったような…。なるほど、ビールを飲むときは一気に飲んだ方がいいと。」
    「嫌いなもの無理して飲む必要はないけどね」
    「今度から、あるならこれもらえば解決ですね。」
    言いながらもシードルが既に尽きかけているので、こっちも少しペースを上げた。
    ……何回か飲んだことあるけど、やっぱりジュースだよな、これ。

    飲み終わったルークがテーブル上のものをつまみながは酒のラベルをひとつひとつ読んでる。
    「さて、次はどのお酒ちゃんにしよっか。」
    「……じゃあ、これにします。たしか有名なやつですよね。」
    「カシスか。そうだね、どこの飲み屋行っても置いてあるから、メニュー見ないでも頼める酒のひとつだよ。んじゃ作ってみるから見てて。」
    言いながら立ち上がって、ダイニングテーブルの向こう側へと移動する。

    「あ、グラスこれ使っていい?」
    「はい、どれでも大丈夫です。」
    細身のシンプルなガラスコップを二つ取り出し、氷をグラスの上の方まで入れる。

    「割り方、好みある?」
    「……もしかして、アレですか?振るやつ」
    目を輝かせてシェイカーを振るジェスチャーをするが、カシスのよくあるカクテルじゃそもそも使わない。
    「今日はそこまで用意してないから、そういう凝ったカクテルはまた今度な。」
    「また今度、ですね。…楽しみにしてます。」
    酒が入って上機嫌なルークがにこにこしながらこっちを見てる。軽く腕まくりして気合いを入れた。

    「ちゅうても昔少しかじっただけだからなぁ。練習しないとおいしいのご馳走できないかもしれんな。でもチェズレイ付き合わせてもそんな飲んでくれないし」
    「……練習、うちでしてもいいですよ。僕はそこまで弱くないので」
    「ルークに出す練習するのにルークに飲ませちゃ意味なくない?」
    「結局僕が飲むならいいと思います」
    あれ、まだ度数低いの一杯だけなんだが。最近激務だったみたいだし回るの早いかな。

    「なんでも良さそうだから、今日は基本のカシスオレンジ作るよ。これなら簡単だから自分でも作れると思う。
     大体カシス1対オレンジ4くらいが基本だけど、多分ルークはもうちょい濃いめが好きなんじゃないかな。まあ、家で飲むなら目分量でいい。」
    グラスの5分の1と4分の1くらいになるようにカシスリキュールを入れる。

    「んで、ここにオレンジジュースを入れる。」
    100パーセント濃縮還元のオレンジジュースを注ぐ。

    「マドラーある?」
    「……どこかにあるような気はします。」
    「家で飲まないならあんまり出番ないよね。んじゃストローで。くるくる回すより縦に刺した方が混ざりやすいよ。」
    ストローは割物を買い漁った時に大量にもらった。レジの係りにはパーティーの買い出しだと思われたに違いないが、ただのサシ飲みだ。

    くるくる回して見ても、分離状態は変わらない。その後氷にストローを突き刺すように混ぜるとすぐオレンジと紫が混ざった。
    「あ、本当ですね。面白いな」
    「とりあえずこっち一口飲んでみて。」
    酒の割合が少ない方を渡す。
    「あ、おいしい。普通のオレンジジュースより甘くて、これ好きです。」
    「それじゃ、こっちも試してみ?」
    「………ん、…。…わあ、これすごくおいしい…。僕こっちのが好きです!オレンジジュースの酸味がやわらかくなって。」
    「だと思った。甘党だもんなぁ」
    「…今まで飲まなかったのを後悔しつつありますね…」
    ルークが選ばなかった方を胃の中に片付けつつ、ローストビーフを手で摘まむ。甘ったるい口が塩気で癒される。

    「……ところでモクマさん。 カシスの割合をもっと多くしたら、更に美味しくなるのでは?」
    ルークがテーブルに肘をついて、組んだ手に顎を乗せる司令官がやりそうなポーズをして至極真面目に言う。

    「ルーク……、もう気付いちまったか…。」
    既に空になったルークのグラス。
    甘い酒の魔力にもうやられちまっているに違いない。

    「……いいか、ルーク。こいつは度数が高い。一気に飲むと、やられる。」
    「そんなに危険なものなんですか…」
    至極真剣な表情をつくって諭す。
    「それでも、やるかい?」
    「……はい!」
    すごくかっこいい感じで言っているが、酒を飲みたいだけ。
    「んじゃまず、これ飲んで。」
    ミネラルウォーターを別のグラスに注いで差し出す。
    「水…ですか?」
    「うん、水。これを飲みきってから次出すよ。…俺がいない日でも、ロックとかストレートの酒飲むなら一杯ごとに水飲むくらいが丁度いいよ。…他のこと全部忘れてもいいからこれだけ覚えといて。」
    「そういうものなんですね。わかりました。」
    飲み方指南が目的なんだから、少しは先生らしいことをしておく。……覚えてるかな。少し心配だが。
    ルークは水を躊躇なく飲み干した。
    「おー、いい飲みっぷり」

    「そんでもって、これがカシスの原液。…舐めるくらい、ゆっくり飲んで」
    カシスオレンジが入っていたグラスの一番底の氷の半量くらいを注ぐ。
    興味本位で自分のグラスにもほんの少し。

    「では、いただきます。」

    「わあ。すっごい…。甘くて、おいしい…」
    満面の笑みでとろけてる。
    流石に甘過ぎるって言わないかな?と儚い期待はしたけど、だめだった。はずれまんじゅうを美味しいと言う子だもんね。
    そりゃ原液だって美味しく飲めちゃう。
    まずいもの教えちまったかな。ルークの肝臓、二つの意味アルコールと糖で心配になる。エリントンでしじみ汁手にはいるかな。

    試しに舐めて見たけど、俺には無理だったので潔く炭酸水を足してカシスソーダにした。

    気付けばゆっくり飲むように言ったはずの原液はグラスから消えている。心なしかルークの頬が赤い。
    水のグラスにおかわりを注いだ。

    「モクマさん、これはどうやって飲みますか?今度は僕が作ってみます」
    「……それは、カルーアか。ミルクとか、アイスコーヒーで割ることが多いよ。割合はさっきと一緒。
    …だけど、先に水飲もうな」

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    DONE #チェズルク版ワンドロワンライ
    第8回お題「海」お借りしました。
     ――潮騒の音が聴こえる。

     ミカグラは島だから、四方を海に囲まれている。
     それはもちろん知っていたのだけれど、夏場と違って肌寒さを感じる時期しか知らなかったから、あまり実感はないままでいた。DISCARD事件の捜査の合間、海へ足を向ける事はついぞなかったし、労いにとナデシコさんが用意してくれた保養地は温泉で、長い時間を過ごしたマイカの里は山あいだ。
     海沿いの街をそぞろ歩くことはあっても、潮の香りが届く場所には縁がないままこの土地を離れた。
     だからこうやって、潮騒が耳に届く庭先でぼんやりと涼む時間を過ごすことは初めてだ。僕はと言えば、休暇中の穏やかな時間を存分に楽しんでいた。
     久しぶりに訪れたミカグラは、ますますマイカの影響を受けているように見える。朱塗りの電柱にはびっくりした。小さな島で異彩を放つ高層建築が立ち並ぶ中、平屋や二階建ての慎ましやかな家が新たにいくつも軒を連ねていた。事件の直後には、ほとんど木造の家なんてなかったけれど、マイカの里のひとたちが少しでも穏やかな気持ちで暮らせるようにと、ブロッサムの人たちが心を砕いた結果なのだと、コズエさんが嬉しそうに話していたことを思い出す。
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