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    むつき

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    放サモ用文字書きアカウントです。ツイッターに上げていた小説の収納庫を兼ねます。

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    クニヨシの漫画製本を手伝うリヒト

    #東京放課後サモナーズ
    tokyoAfterSchoolSummoners
    #リヒト
    richt.
    #クニヨシ

    イベント開催11時間前 コピー機を通過してきたばかりの紙は、インクも黒々として熱かった。そのうちの一枚を手に取って眺めるリヒトのかたわら、漫画の続きは次から次へとコピー機から吐き出され、どんどんと積み上がっていく。
     描き込まれている人物やフキダシは、どれも存分に描き手の情熱を伝えていた。生き生きとした表情、疾走感のあるコマ割り。毛並みは緻密に描き込まれ、広げた手のひらにある肉球は丸くつややかで、いかにもやわらかそうだった。
    「それでひとセットだから! たくさんあって悪いんだけど、頼りにしてるね!」
     溌剌としたクニヨシの声を受けて、リヒトは我に返る。目の前に積み上がる紙の山。ふたのあいた段ボール箱。先ほどカーテンごしに確かめた空に浮かぶ月は、リヒトの頭上高くに輝いていた。
     そこから先、リヒトはひたすらに手を動かした。ちゃぶ台の前に陣取り、コピー機の前から紙を複数枚取り上げる。ずれがないように整え、まっすぐな折り目をつける。重ねてホッチキスを打つ。ページをめくって確認。そして次の一冊へ。
     クニヨシ言うところの「突貫もふもふコピー本」は次から次へと印刷され、リヒトの手によって次から次へと本の形になっていく。こんなに大量の本を持っていくつもりなのか――しかもこれとは別に、印刷所に発注した新刊も何冊かある――と内心怯えるリヒトをよそに、描いた本人は、お昼までにはなくなっちゃうかなぁ、でもこれ以上刷るのはさすがに難しいからなぁ、と呟いている。彼の作品は、世に求められているのだ。
     彼の画力と人気ぶりを思って、リヒトは一瞬ふさぎこみそうになる。しかしすぐに首を振った。クニヨシはすごい。それはひとえに彼の情熱と努力から来るものだ。彼のエネルギーを見習って、自分も精進を続けなければならない。何より今は、明日のイベントまでに製本を終わらせなければならない。
     深夜だというのに、クニヨシは眼鏡のレンズの向こうで瞳をらんらんと輝かせている。彼の「好き」を存分に伝えられるイベントを目前に控え、アドレナリンが止まらないらしい。漫画を完成させたのちも、やれおしながきだ、同好の士たちへの手紙だと、すさまじい勢いと熱意で手を動かしている。懸命に、しかし何より楽しそうにペンを走らせるその姿をそっと見つめたのち、リヒトは再び奮然として紙の山に手を伸ばした。
     
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