——まだ起きてるなら、あたたかいものでも飲みに行かない?
手持ち無沙汰に眺めていた端末の画面に、見慣れた名前と気易いメッセージが一瞬だけ浮かび上がり、消えていく。行く、と簡素な返事を寄越したキョウは、のろのろとベッドから抜け出した。すっかり体の線に馴染んだ部屋着のシャツの上からパーカーを羽織る。爪先にキャンバス地のスニーカーを引っかけ、部屋を出ようとした矢先、戸口に待ち構えていたレンと鉢合わせた。
「いつから居たんだよ」
「ついさっき」
時刻は夜半に差しかかろうとしている。人気のない廊下に反響するのを気にして声をひそめるキョウに対し、レンは平生と変わらぬ調子であっけらかんと返した。
「俺が寝てたら、行かないって言ったらどうするつもりだったんだ」
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