目を合わせられない「いい加減目を合わせて話せないかな」
向かいでコーヒーを飲むイルミが呟く。少し目線をあげると真っ直ぐと私を見てた。ドキッときた私はまた目線を下に戻し紅茶を眺める。
普段は身長差があるから上を向くのは首が痛くなるから目を合わせない。と、言い訳をしている。本当は恥ずかしくて目を合わせられないだけ。目を合わせたら最後、あの真っ黒な瞳に吸い込まれて帰って来れなくなりそう。弟のキルアも多分そうだったのかな。
「……聞いてる?」
「へぁ?ごめんなさい。それでなんだっけ?」
「目、合わせてくれないの?」
テーブルに肘をついてこっちを見つめている。合わせられない。紅茶を飲み、目を泳がせるしかできない。
するとイルミの方から立ち上がるような音がした。何かあったのかな。少し顔を上げる。イルミの手が優しく私の頬に触れ、黒く長い髪が覆い被さり世界が閉じられる。
「やっと目が合った。どうしてそんなに目を合わせないの。ヒソカとは合わせるくせに」
淡々と話を続ける。下を向こうとすると頬当てられた手に止められ強制的に目を合わせるような形にされる。目を合わせないように泳がせながら答える。
「だって恥ずかしい。イルミの目見るといつも以上に意識しちゃっておかしくなりそう」
「ふーん。おかしくなればいいよ。3回目だよ。オレの目を見て、名前を呼んで」
死刑宣告。でも回数も伝えてきたし、これが最後ってことだ。ゆっくり目を合わせる。ドキドキどころか心臓がズクズクする。熱い。頭から溶けそう。でも言わなきゃ。唾を飲み込み口を開ける。
「あ…う………ぃ…イルミ…」
「うん。合格。いいこいいこ」
頬に触れていた手を退けて、大きな手で私の頭を撫でる。こっちの気も知らないで。
「私ペットじゃないんだけど…」
「変わらないよ。オレにとっては可愛いペットだし。……そんな顔しないでよ。意地悪したくなる」
「ううぅ〜〜〜〜」
恥ずかしさに耐えきれなくなりテーブルに項垂れる。それでもイルミは私の頭を撫でていた。