Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    g7_sratsneves

    @g7_sratsneves
    R18ものはTwitterのふぉろ限にしてます。
    18歳未満の方からのフォローはご遠慮ください。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request
    POIPOI 45

    g7_sratsneves

    ☆quiet follow

    サー総受風味なえっちな本を作ろうと目論んでいてやっとプロローグ部分が出来たので、置いておきます。パンツ全然まだまだ脱いでくれません。助けてください。

    プロローグ的な何か もし、あなたが、この超人社会と言われる混乱渦巻く世の中で、命がけで人々を守り、決して悪に屈することのなく闘う存在を「ヒーロー」と呼ぶのであれば、そして、ヒーローとは須らく「強く、明るく、美しい」存在なのだと言うのであれば、これから私が語る内容は、到底信じることの出来ない退屈な作り話だと思うだろう。
     私もヒーローの端くれではあるが、万人が思い描くヒーローとしての外見を持って産まれはしなかった。超人と言われる個性をもった赤子が誕生してから、多様を認める風潮が強くなり、存在しやすくなったとはいえ、人間離れした容姿の個性を持って産まれると、ヒーローという職業を手にしても尚警戒や嫌悪の対象になりやすい。
     現に、私がいきなり目の前に現れたら、恐らく大抵の人々は好感や安心感などとは程遠い感情を抱くであろう。理由は明白で、私の容姿が、噛まれたら痛みと不快な痒みを伴う「ムカデ」を連想させるからだ。

     新潟に本家のある「百足家」の人間は代々警察の仕事に従事る者が多かった。超人を生み出す個性の研究が進み、個性婚が問題視され始める頃よりもずっと前から、百足家は警察の仕事に就く者が多かった。元々真面目で正義感の強い一族だったのかもしれないが、そのことが後の超人社会で幸いした数少ない例だと言ってもいい。歴代の百足家の人々の貢献によって、ムカデを連想させる容姿であってもあからさまに敬遠されることはほぼなかった。少なくとも新潟という土地では。百足家の出だからという田舎特有の家柄重視の風潮と、人を見た目で判断してはいけませんという有り難い道徳教育のおかげだ。
     実際百足家の先人達は、警官として立派に人々を守ったり、人の役に立った優秀な人物が何人もいた。だから地元では信頼されていた家柄だったし、友好的な人間関係が備わっている地盤があった。それでも、それでもだ。そんな恵まれた環境下であっても異形系の個性が現れると周囲に戸惑いをもたらした。こういった地盤のない人は言わずもがなだ。急速に個性が発現し始め、人々が戸惑い混乱する中、異形系の個性が現れると無邪気な差別が生れる。「気にすることないわよ、ほら百足家の人をご覧なさいよ、あんな個性でも立派な人達ばかりじゃない」という具合に。
     第2、第3世代のムカデの個性は、ムカデに若干似ている程度の容姿と歯から滲み出るいやな毒素のみだった。毒素の成分はムカデのそれと同程度で、噛みついた人間に痛みと痒みを与えたが致死には至らなかった。
     しかし、第4世代になると、実際のムカデが可愛く見えるほどグロテスクな容姿をもって産まれるようになった。本来の人間の手足、首にあたる部位が、もはやムカデの胴節そのもの(もっとずっと凶暴で巨大だった)になっていた。しかも胴節には伸縮性もあり、思いきり首を伸ばしたならば、建造物の三階あたりまで届いてしまうので、階の人々にムカデ怪物のトラウマを植え付けるのは造作のないことだった。

     幼い頃、公園で遊んでいた時に池に落ちそうになっている子どもを助けたことがあった。
     少なくとも私は助けたつもりだった。が、助けられた子どもは池に落ちてずぶ濡れになった方がマシだと言わんばかりに恐怖で目を見開き口を歪めていた。人は理解のできない状況に置かれると泣くことも叫ぶことも出来なくなるのだと知ったのもこの時だった。しばらくして、その子は火がついたように泣きだした。安堵したためではないことは、誰の目にも明らかだった。悲鳴のような泣き声には恐怖と威嚇のような色が存分に乗っていた。
     私も子どもだった。びっくりして今度は逆に私が恐怖で固まる番だった。なぜその子がそんなにも泣き叫んでいるのかまったくわからなかった。池に落ちるのを助けたのに、その子は無事なのに、痛い思いもしていないはずなのに。なぜなら、私はやさしく、私の手で、その子を包んでいるだけなのだから。もちろん、その子にも、公園にいる人々にも、そうは見えていなかった。
     落ちそうになっていた子どもの体には私の腕がまだ巻き付いていた。もっとも客観的に補足するのであれば「ムカデの胴節のような長いグロテスクな腕が」だ。落ちそうになる瞬間を見ていなかった人からしたら、子どもが巨大なムカデに捕らわれているようにしか見えなかっただろう。
     混乱して逆に固まってしまった私のところに大人が集まってすぐに、その子と引き離されたような記憶がある。実は、その後のことはあまり記憶に残っていない。
     ヒーローの資格がないと、むやみに個性を使うことを禁止されているのはご存知の通り。警察官ですらヒーローの資格がなければ個性を使ってはいけない。個性を持って産まれた大概の子ども達はヒーローに憧れ、ヒーローを目指す。しかし、私の場合はそれだけではなかったのはご想像の通りだ。子どもの頃に刻まれた体験が、代々警察の仕事に従事ることが当然だった百足家から、ヒーロー「センチピーダー」を誕生させた。
     池に落ちそうになった子どもを救ったのが、異形型とは言え「ヒーロー」であったなら、あの子は恐怖で泣いたりはしなかっただろう。我ながら百足家気質の生真面目な思考回路だと思うが、私は百足家の一員として、きちんと愛情深く育てられた。百足家のひとりの人間として恥ずかしくない教育を受けてきた。私もそれに応えたかった。偏見による差別を全く受けなかったとは言わない。常に四肢が露出しないように服装にも気を遣いマフラーのように巻き付けた首はもちろん手足すら人前で伸ばすようなことはヒーロー科のある高校に入学するまで決してしなかった。どうしても与えてしまう警戒心や嫌悪感をできるだけ緩和できるよう紳士的に誠実に振る舞うようにもした。この「ムカデ」の個性を授かった第4世代の私には、立派な百足家の人間として認めてもらうためにも、ヒーローになる以外の選択肢はなかった。

     ヒーローになった私は、ナイトアイ事務所に所属することになる。
     そして、今もナイトアイ事務所にいる。

     「サー・ナイトアイ」という名のヒーローのことを事細かに説明する必要はないだろう。どんなに名前を覚えるのが苦手な人間でも、ヒーロー名を覚えていなくても「オールマイトの元サイドキックだ」と言えば、少なくとも国内の人間は、ああ!あの真面目そうな(でも少々地味な)ヒーローのことだね!と一発でわかるだろう。
     まず、国内に「オールマイト」を知らない人間はいないと断言してもいい。国外であっても彼を知らないという人間は、まずほぼいないだろう。そのオールマイトのサイドキックなんてヒーロークイズでは簡単すぎて出題すらされない。
     しかし、「サー・ナイトアイのサイドキックは誰でしょう?」というクイズなら少しだけ難易度があがるだろう。

     ナイトアイ事務所からサイドキックの要請が来たときは正直意味がわからなかった。ナイトアイ事務所と言われても最初はピンとこなかった。なぜなら、そんな事務所名を聞いたことがなかったからだ。のちに、サー・ナイトアイがオールマイトのサイドキックを辞めて、独立して個人事務所を立ち上げることになったと聞かされてサイドキック要請の意図は理解したが、それでもなぜ私が選ばれることになったのか理由がまったく思いつかなかった。
     私にはサー・ナイトアイから指名されるような接点が皆無だったからだ。
     過去の記憶を掘り起こしてどんなに思い出そうとしても、幼少時代、学生時代はもちろん、ヒーローになってからも彼と会った記憶も、話した記憶もなかった。
     彼の経歴を調べるために、ヒーローが閲覧可能なデータベースではじめて「サー・ナイトアイ」と入力して検索をかけた。
     本名「佐々木未来」とあった。
     この名前にもまったく覚えがなかった。そして出身地は「不明」と記されていて、少し私は気分が重くなった。出身地が「未記入」と表示されている場合、これはヒーロー本人がなんらかの理由で出身地を伏せたい場合に記載されるが「不明」の場合、出生地がわからなかったり、孤児院に引き取られていた可能性が高い。この表記自体は決して珍しいことではない。私のような第4世代の異形型の子どもはもとより、異形でなくともその個性によっては親に見放され捨てられることも少なくなかったし、ヴィランの犯罪に巻き込まれて親を失い孤児になる者も多かったからだ。こんなことがなければ、知ることもなかったのにと、知らない人の秘密をこっそり得てしまった気分になった。別に不正などをしているわけではないのだが。仮にサー・ナイトアイが孤児だったとしても、やはりなんの記憶もでてこなかった。

     無理やりに接点としてカウントできそうな共通点をあげるとしたら「オールマイト」くらいしかもう思いつかなかった。
     サー・ナイトアイはオールマイトの重度のファンだと公言している。それはメディアや雑誌のインタビューももちろんだが、自分のヒーロープロフィール欄にもしっかり書いてあった。
    「好きなもの:オールマイト、ヒーロー」
     現役のヒーローが自分のプロフィール欄に他のヒーロー名をあげることは珍しい。私ももちろん、オールマイトのことは尊敬しているし大好きだがそんなに堂々と書けるほどの度胸はなかった。
     ヒーローであれば、他のヒーローはライバルであり、自分よりも実績や人気があるヒーローに対しては同業者として、単なる尊敬や憧れだけではない感情を抱くのが普通だろう。ヒーローとは市民の味方であり、人気者であることに越したことはないのだから。ただ「オールマイト」はあまりにも次元が違い過ぎた。オールマイトに憧れてヒーローになった子ども達は、その頂きの途方もない高さと分厚さを知る。オールマイトを嫌うヒーローはいない。そしてオールマイトをライバル視するヒーローもほぼいない。完全に別格なのだ。
     私も「オールマイト」というヒーローのことは尊敬しているし、好きか嫌いかと尋ねられたならば、もちろん大好きだと即答する。しかしそれは、歴史上素晴らしい功績を残した偉人に感じる感情と似ている。逆に言えばそれだけだ。オールマイトを好きだの尊敬しているだのという部分が接点だとするならば、あけすけに公言しているサー・ナイトアイとは温度差があるだろう。
     ヒーローの資格を得てからは地元新潟を中心に堅実な仕事を熟している自負はあった。連日ニュースになるような大事件に遭遇することはほとんどなく(あっても新聞の社会面に載る程度で決して一面ではない)オールマイトやサー・ナイトアイのようなスーパーヒーローとのチームアップの経験もなかった。
     いったいどういう理由で私が選ばれることになったのか、その理由を知りたいためだけに私はナイトアイ事務所へ赴くことを決めた。

     建物に到着するとサー・ナイトアイ本人が出迎えてくれた。メディアの映像や写真でしか見たことがなかったが、サラリーマン風のヒーローコスチュームとひと昔前のビジネスマン風の髪型から非常に地味な印象しか持っていなかった。実際に会うと普通のサラリーマンにはまったくもって見えなかった。はじめまして、と手を差し出し名乗った彼は、にこりともしていなかったが、その所作はまるで本物のサラリーマンのようで、これから商談の取引を開始しようとする人のようだった。ただ纏っている空気感は一般人とは明らかに違った。
     エレベーターで事務所まで案内されたあと、しばらく待つよう言われひとりぽつんと部屋に取り残された。殺風景な事務所には冗談のようにオールマイトのポスターが貼られていた。あまりにも事務所の雰囲気を度外視したポスターの貼り方だったので、とんでもないところに来てしまったのかもしれないと不安になった。後で聞いたら、事務所での彼の動線を元にもっとも視界に入りやすい壁にポスターを貼っていたというびっくりするような理由があったのだが、そんなこと知る由もなかった私は非常に居心地が悪かった。
     しばらくして戻ってきたサー・ナイトアイは、事務所についての簡単な説明(説明も何も現時点で私と彼しかいなかった)契約に関する書類を私に差し出すと、質問があればどうぞ、と言った。
     私は書類に目を通す前にまず聞きたかった素直な疑問を口にした。
    「どうして私が選ばれたのでしょう」
    「見込みがあると私が判断した」
     間髪入れずに彼は言った。
    「見込み?…あなたのサイドキックのですか?」
     なんの接点もなかったはずだった。それなのに、まるでずっと見てきたような言い方をする。いつからサー・ナイトアイが独立して事務所を構えようと考えていたのか、サイドキックを探していたのかはわからない。ただ、見込みがあると判断されるにはそれなりの材料と比較対象が必要なはずで…その時ふと失くしたパズルが見つかった時のような感覚がした。ここに来るまでの道中、駅構内の売店だったか、途中寄ったコンビニだったか忘れたが、飛ばし記事がほとんどのタブロイド紙にあった見出しも思い出した。(ヒーローの裏の顔!元トップヒーローの告白!)(独占取材!ヒーロー汚職の真相!)この手の記事のほとんどが嘘だとしても、いささか煙が立ちすぎているような気がしてならないのは、実際のところ、本当にプロヒーローによる犯罪が増えてきているということだ。それをヒーロー公安委員会が放置しているはずがない、つまり――
    「……監視していたんですか?」
     あまたのヒーローの中で彼の目に留まるということは…。
     この異形型が影響しているのだろうか?
     いつから…。
    「君が公安内でもかなり注目されているのを知らないだろう?」
    「公安……」
     やっぱり、疑われていた。パズルが完成した。犯罪を犯してしまうヒーロー予備軍としてマークされていたのだと確信して、目の前が赤くなるのを感じた。怒りで体が震えそうになるのを必死で堪えた。
    「公安はヒーロー番付でヒーローを評価しているわけではない。全国に配置されるヒーローは、それぞれ異なる環境下で活動をしている。配属される土地によってそもそもの事件数も違う。あんな番付は意味がない。もっと堅実にヒーローの個性と性質、その者の人柄、実践力、能力の高さでしか評価をしない。君の個性の反応速度、拘束術を公安は高く評価している。紹介された候補の中から見込みがあると私が判断した」
     彼は眼鏡のブリッジを人差し指で押し込む仕草をした。
    「元気とユーモアのない世界に明るい未来はない。
     君の個性は実にユーモラス、羨ましい限りだ」
     茶化すような声色は一切なく、心底羨ましがっているようにしか聞こえなかった。ユーモラス?羨ましい?そう言ったのか?この人が?
    「由緒ある家の出である君は、築かれてきた百足家の名を汚すようなことはできない男だ。そして私のことも決して裏切らない」
     どうだ、当たりだろう?と言わんばかりに断言したサー・ナイトアイは、無表情に見えて少しだけはにかんだような可愛らしいと思うような表情を浮かべた、ように見えた。
     彼の言葉で私の心は霧が晴れたような気分になっていた。彼の言葉が素直にとても嬉しかった。だからそんな風に感じてしまったし、この人は自分を公正に評価してくれる信頼できる人物だと確信した。
     それは大きな間違いではなかったが、正しくはなかった。

     今だったらわかる。
     あの時、彼は表情を取り繕うのを失敗していたのだ。


     私はもうここにいない彼のことを思い出すと苦しくて堪らなくなる。
    命が尽きるその時まで、愛する人々の「明るい未来」を信じ、願い、笑えと言い続けた彼は、自分の人生に「明るい未来が訪れる」ことに関してのあらゆる思考がごっそりと抜け落ちている人間だった。
     自分の未来に「明るさ」など微塵も信じていない人間だったのだ。

    ***
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    recommended works