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    Kurenoria

    @Kurenoria

    読んだ本の感想とか、二次創作するために使います。

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    Kurenoria

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    黄飛虎と一緒にパンケーキ作る(そして黒猫パンケーキ歌わせる)話③
    ※藤丸立香♀️前提。限界オタク的な発言が多い。
    ※第三者目線だけど、なぜか限界オタク的な発言が多い。
    ※黄飛虎の息子たちが出てきます。息子たちの設定・性格は全部捏造してます。
    これで最後です。

    #黄飛虎
    huangFeihu
    #藤丸立香
    tachikaFujimaru
    #パンケーキ
    pancake

    黄飛虎と一緒にパンケーキ作る(そして黒猫パンケーキ歌わせる)話③ 二人はこの後同じ工程を何度か繰り返し、人数分のパンケーキを作り終えた。
    「これで完成だな。」
     むふふ、とドヤ顔になる立香。
    「パンケーキと同じくらい甘いですね。これはあくまで土台ですよ。ど、だ、い。」
    「土台?他にも何かあるのか?」
     立香はよくぞ聞いてくれました!と、いそいそ用意する。
    「実はクリームと果物もあるんですよ。これを添えれば完成です!」
     立香が用意したのは、籠いっぱいの果物と、ホイップクリームとチョコスプレー。
    「これはまた、甘いものばかりだな。」
    「パンケーキはこれがないと面白くないですから。」
     立香は試しに自分の分のパンケーキにホイップクリームをかけた。シューと小気味よい音が厨房に響き、とぐろを巻くように一回転すると、パンケーキの表面があっという間に真っ白になった。続いてチョコスプレーをかけると、今度はカラフルポップな仕上がりになった。ついでに果物の中から、シロップがしみこんでいるチェリーをおひとつ、のせた。
     レトロな雰囲気の喫茶店にありそうなパンケーキが、ここに爆誕した。
    「ホイップクリームとチョコスプレーはこんな感じで使います。あいにく量が多くないので、使いすぎは要注意です。果物はたくさんあります。」
    「善哉!」
     黄飛虎も立香と同じようにホイップクリームをかけた。次に使う息子たちのためなのか、量はかなり少なめである。チョコスプレーはかけず、籠いっぱいの果物の中から選んだのは、白桃。
     彼は丁寧に桃を剥き、果物ナイフで一口サイズに切った。
    「・・・もう一個、いただく。」
     申し訳ないと思っているのか、黄飛虎は顔を赤らめながら、籠の桃を手に取り、剥いて、切った。
    (遠慮なく取っていいのにね。)
     ハロウィン特異点の黄飛虎がアイテムのおまけをつけようとして、在庫がなくなりそうになったことを思い出す。誰かにものを渡すときは遠慮しないのに、自分でものを取るときは遠慮してしまう。そういう性分なのだろうか。
     ぴぴぴ、と金眼神鶯が鳴いた。どうやら黄飛虎のパンケーキに興味を持っているようだ。
    「金眼神鶯にも、このパンケーキを食べさせたいのだが、鳥が食べても害はないのか?」
    「特に大丈夫だと思いますよ。でも、そうなるともう一枚つくらないと・・・。」
     そこまで気が回らなかった。自分と黄飛虎と、彼の息子たちの分だけでよかったと。
     立香はふと、戦闘している黄飛虎の姿がよぎった。
     金眼神鶯。黄飛虎の肩に乗っている、この小鳥さんのことである。小さくて愛らしい見た目だが、いざ戦いを前にすると、炎をまといながら突撃し、敵を焼き尽くす恐ろしい鳥でもある。立香が読んだ封神演義によれば、あの妲己の顔に傷を負わせた鳥だそうだ。
    (うぐいすと言うより、ファイアーバード・・・。)
    立香は金眼神鶯と目が合った。可愛い。
     黄飛虎が、はははと笑う。
    「さすがに一枚丸々食べるのではないぞ。某のパンケーキのかけらを少しあげるだけだ。」
     ああ、なるほど、と立香。幼い頃に見たテレビで、飼育員が手のひらに餌を乗せ、そこに鳥がやってきて餌を啄む様子が映っていたことを思い出した。
    「ただ、なにも言わずにかけらを持っていたら、はしたないと思われそうでな。」
     黄飛虎のささやかな気遣いに、品の良さがにじみ出た。
    「よし、こんなものだろう。」
     黄飛虎は大きな皿に、一口サイズに切った桃で埋め尽くした。何個分か分からないが、一目見る限りかなりの量だと思われる。
    「もしかして、桃、お好きなんですか?」
    「特段、好きという訳ではないが、某にとって、なじみ深いものだからな。食べると、安心する。」
     なるほど、と立香。封神演義といえば、度々仙桃が出てくる。一般的なゲームでいう回復アイテム的なものなので、彼の言うことも分かる気がした。
    「盛り付けは各自好きなだけ、セルフサービスにしましょう。子どもたちの好みもありますし。」
    「そうだな。なら、息子たちをここに呼ぼう。」
     黄飛虎は立香から少し離れ、比較的スペースのある場所に立った。
    「息子たちよ、出てきなさい。」
     そう言うと、背後の何もないところから三人の少年が現れた。
    「やってやるぜ!」
    「お呼びでしょうか。父上。」
    「天祥が一番乗りです!」
     三人は黄飛虎の影に隠れ、様子を伺っている。
    「あれ?戦場じゃない?」
    「ここはどこですか?父上。」
     どうやら、呼ばれた場所がはじめて訪れる所だったため、きょろきょろして戸惑っているようだ。
    「天化、天禄、天爵、天祥。このお方が某の主、藤丸立香殿だ。あらためて、挨拶しなさい。」
     黄飛虎の声に、三人はくるりと立香に注目した。
    「あたし、藤丸立香。よろしくね、みんな。」
     立香はひとりひとりに笑顔を交わすと、彼らは各々で「はい。よろしくお願いします。」と言った。
     元気で明るい印象の次男、黄天禄。
     僧のようなフードを被るおとなしめな三男、黄天爵。
     最も幼いが、活気に溢れる四男、黄天祥。
    「あれ、ひーふーみー・・・。」
     ひとり足りない?と思った直後、立香の足下からもうひとりの少年が、どん!とモグラたたきのモグラのような登場で来た。
    「うわっ!びっくりしたっ!」
     遅れて来た少年は、立香に対して頭を下げた。
    「遅れました、私は黄天化と申します。」
     土遁の術でやってくるという予想外の登場をしても尚、威風堂々と佇む長男、黄天化。黄天化だけは四人の息子たちの中でも変わった雰囲気を醸し出している。
     立香が読んだ封神演義によれば、黄天化は幼い頃に行方不明となり、黄飛虎の元から離れた時期があったらしい。黄飛虎の宝具はこの黄天化から借り受けた漠耶の宝剣だという。
     黄飛虎の四人の息子たちは、それぞれ違った個性があるものの、髪の色が黒で金のメッシュが入れてあることと碧眼は共通している。父親の血が濃い影響なのか、みんな父親ゆずりのいい顔だ。
     四人の息子たちは、黄飛虎の使い魔、いわゆるサーヴァントのサーヴァントのような存在だ。父親である彼と違い、常に現界は出来ないらしい。あくまで霊基に登録されているのは黄飛虎で、息子たちは含まれていない。黄家の絆の象徴として、彼らはやってくるのだ。
    「主と一緒にパンケーキを作ったのだ。お前たちも食べないか?」
     聞き慣れない単語に、お互いの顔を見合わせる四人。
    「案ずるな。主によれば、とてもおいしいおやつだそうだ。」
     おいしいおやつ。確かにそうなのだが、確かにそうなのだが。
    (言い方が可愛いなこの人。)
     一緒に作って、パンケーキの全貌を知っても尚、味については未知なのだろう。彼が持てるだけ持っている表現なのだろうが、にしても、可愛い。
    「おやつですか!食べたいです!」
     黄天祥が、いち早く手をあげた。
    「ずるいぞ天祥!兄貴に譲れよな。」と黄天禄。
    「あっ、また出遅れました。」と黄天爵。
    「安心しなさい。ちゃんと全員分あるからな。」
     黄飛虎は、これ以上言い争いになる前になだめた。
     やはりこの人、息子たちに対する話し方が、立香に対する話し方より柔らかいように感じる。
    「皿を持って、ひとりずつよそいなさい。桃もあるぞ。」
     黄飛虎はひとりひとりに皿を渡し、ホイップクリームのかけ方を簡潔に教えた。
     パンケーキはひとりにつき二枚。ほぼ同じくらいのサイズである。ひとりずつ、順番にホイップクリームをよそっていった。
     立香は彼らがパンケーキをトッピングしている間、イチゴを食べやすいサイズに切り、さりげなく桃の隣に置いた。ただ自分が食べたいだけなのだが。

    パンケーキの盛り付けが終わり、各々で席に座った。立香以外は、座っても視線がパンケーキに釘付けだ。
     厨房側に立香、黄天爵、黄天祥が座り、黄飛虎、黄天化、黄天禄がテーブルを挟んで向かい合う配置になった。そのため、立香の正面に黄飛虎が座っている。
    (でっか・・・。)
     座っていても、少し見上げないと顔が見えない。視線を下に移すと、ちまっとパンケーキが置いてある。立香と同じサイズなのに、ひとまわり小さく見える。
     黄飛虎の息子たちパンケーキは、量に差があるものの、ホイップクリームとチョコスプレーが同じように盛られている。
     微笑ましいな、と思いながら眺めていくと、ひとつだけ、目を疑うパンケーキがあった―黄天化のパンケーキには何ものっていないのだ。
    「もしかして、甘いものは嫌いだったかな?」
    「そうではありません。こういった食べ物を見るのははじめてで、まず無難なものにしようと思ったのです。」
     黄天化の理由に、なるほど、と言う。
    「そっか。嫌いじゃないなら、よかった。」
     ははは、と立香は苦笑いする。今回の場合、生真面目さが裏目に出るかもしれない。
     彼女は知っている。パンケーキというのは、ホイップクリームやチョコスプレー、果物を足すことによって、甘さを加えていくのだ。つまり、パンケーキ自体は甘くない。
    (きっと、物足りないだろうなー。)
     ホイップクリームが残っていれば、と願わずにはいられない。
    「これで全員そろいましたね。」
     立香の言葉に、黄飛虎たちは頷いた。
    「それじゃ、いただきます!」
     立香の一声で、全員が一斉にフォークを手に取り、食べ始めた。
     立香は、パンケーキをフォークで一口サイズに切り、ホイップクリームを絡め、ぱくり。
     うんうんと頷き、とろけた。
    (美味しい!この味だよ。)
     白くて甘ったるいホイップクリームと、しっとりしたパンケーキが口の中で絶妙に合わさった。加えて、チョコスプレーのパリパリした食感も乱入する。ものたりないなんて言葉がおこがましい、この甘さがクセになりそうだ。
     一度飲み込み、今度はシロップ漬けのチェリーを一口。今度はクリームとチェリーの甘さが融合し、口の中がスイートに満たされていく。
     たった二口で、極上の満足感に溢れた。
    (最っ高!作ってよかった!)
     パンケーキのおいしさに止まらなくなった立香は、フォークでパンケーキを切って口に運ぶ動作を繰り返し、食べていく。
    (・・・・・・おや?)
     ハムスターのように、頬いっぱいに頬張っていくと、ふとあることに気付く。
     甘くておいしいおやつを食べているというのに、黄飛虎は、この上なく静かだ。
    「・・・・・・。」
    吟味しているのか、口に入れて飲み込むまでの間が、恐ろしいほど静寂で、長い。しかも、咀嚼音ひとつ鳴らない。立香のように、ぽいぽい口の中に入れるのではなく、少しずつ少しずつ、音も立てずに、味わっている。息子たちも、黄飛虎とほぼ同じ食べ方である。
    「・・・・・・・・・。」
     立香の正面に座る黄飛虎の顔だけ見ても、美味しいのかどうかも分からない。ただ、もぐもぐと口だけは動いている。
    「・・・・・・・・・・・・。」
     なぜパンケーキを食べているだけなのに、こんなに緊張するだろうか。
    「・・・・・・・・・・・・・・・。」
     立香は自然と、黄飛虎の口元に集中した。いくらなんでも、長いのでは?
    「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
     食堂に、何も音は響かない。
    「お、お味はどうです?」
     立香は謎の空気に耐えられなくなったのか、黄飛虎に話しかけようとした。
     そのとき、立香の隣の黄天祥が、ふるふると体を震わせ、言った。
    「美味しいです!父上!」
     次いで、黄天禄、黄天爵が、顔を輝かせた。
    「うまいぜ!食べたことない味だ!」と黄天禄がニカっと笑う。
    「こんなに美味しいものが、ここにあったのですね。」と黄天爵が淡々と口に入れていく。
    「ほう、これは美味いな!」
     黄飛虎も、ようやく反応した。もしかしたら、一番輝く笑顔をしているかもしれない。
    「主が食べたいと言ったのも、納得ができる。これは、美味いな!」
     黄飛虎はパンケーキのひとかけらを手にのせ、金眼神鶯にあげると、ぽっと頬が火照った。
    「よかったあ・・・お口に合って。」
     立香は胸をなで下ろした。
    「びっくりしましたよ。食べてからずっと静かで、お口に合わないかなって思っちゃいましたよ。」
     え、と黄飛虎。
    「すまない。口の中がなくなるまでは喋らない方が良いと思って、黙っていたんだ。」
    「そ、そうだったんですね。」
    黄飛虎は宴のとき、他のサーヴァントと同じくらい、食べて飲んでワイワイはしゃぐのに、主と同じ卓を並べているときは、一挙手一投足が粛々としている。その分、立香の食べ方と比べてギャップがあり、時間がかかったように感じた。
    「某のしたことが・・・不安にさせてしまったのか。」
    「いやいやそんなことないですよ。静かに食べてる黄飛虎さん、黄飛虎さんぽくて。」
     自身を一介の武人と言うからには、もっと豪快に食べるイメージがあった。具体的に言うと、一口サイズに切るのではなく、大きなパンケーキをふたつに切って、ばくり!と食べたり、なんなら、フォークなんか使わずに、大きな口を開けて、手掴みで豪快に食べ、指や口元についたクリームもお構い無しに舐めとったりして・・・筋力Aだから、握り潰せそうな気もする感じだ。そんな黄飛虎も見てみたい気は、しなくもない。彼の場合、そのようなイメージとは逆だったようだが。
     その上品な食事の作法は、生前からなのか、聖杯から得た知識なのか、定かではない。
     黄飛虎の息子たちがいて本当に良かった。もし二人きりだったら、彼の食べているところをずっと見ていたかもしれない。食べる度にほころぶ口元が、とても艶やかだ。
    「・・・・・・。」
     黄天化が、ちらちら弟たちのパンケーキを見ている。それも、羨望的な眼差しで。
     パンケーキの上に何ものっていないのだから、可哀想なくらい味気ないし、気になるのも無理はない。
    「・・・天化、食べたいなら、遠慮しなくていい。」
    「い、いいのでしょうか?」
    「ああ。そうだろう。主。おかわりは、たくさんあるのだからな。」
     急に振られて、驚く立香。ごくん、と飲み込んで、言った。
    「もちろん!まだまだたくさんあるから、食べてくれると嬉しいな。」
     光り輝く笑顔に戸惑う黄天化。渋りに渋った顔で、立ち上がった。
    「・・・お言葉に甘えさせて頂きます。」
     黄天化は厨房へ行き、パンケーキに残りのホイップクリームとチョコスプレーをかけ、戻ってきた。
     黄天化は、恐る恐る、一口。
    「どうだ?天化?」
    「・・・美味しいです。」
     頷くだけだったが、口元がにやけている。どうやら、お気に召したらしい。

     しばらくこの和やかなやりとりが続き、各々でよそったパンケーキも食べ終わった。ついでに黄飛虎が切った桃も、あっという間になくなり、立香が途中でイチゴを用意し、みんなで食べた。こちらも好評だった。
     黄飛虎が、ぶるっと体を震わせた。
    「息子たちよ。楽しかったか?」
    「はい!」
     黄飛虎の息子たちは、一同に返事した。 
    「父上の主さま。今日はありがとうございます。」
     黄天祥が立香に頭を下げると、それに次いで黄天化、黄天禄、黄天爵が続いた―黄飛虎は、言葉にはしないが、息子たちの現界が、そろそろ限界が近づいてきたらしい。
    「こちらこそ、ありがとう。美味しそうに食べてくれたから、作り甲斐があって楽しかったよ。」
     はい!と笑顔で返事をした黄天禄、黄天爵、黄天祥は、黄飛虎の背後へ忍び、退散した。
    「では主、失礼致します。」
     遅れて、黄天化は登場した時と同じ、土遁の術で土に潜るように退散した。
    (愉快だけど、いい子たちでよかったな。)
     パンケーキをもてなした立香も、心の底から満足していた。こんなに、胸いっぱいになったのは、久しぶりかもしれない。

     パンケーキを食べ終えた二人は、流し台へ皿を運んだ。皿にはかけらひとつ残らず、綺麗に食べられていて、立香は一緒に食べて本当に良かったと、心の底から嬉しかった。
    (ううん。それだけじゃないな。)
     もちろん、パンケーキもとても美味しかったのだが、それと同じくらい、黄飛虎と一緒に作ったことが、たまらなく楽しかった。黒猫パンケーキも、破壊力が凄まじかったのだが。
    「すみません、片付け、手伝って貰っちゃって。」
     ジャー、と蛇口から水を出した。
     いつもなら、食堂にやってきたサーヴァント分の食器を片っ端から食洗機にまとめて入れるのだが、今回は六人分しか皿を使っていないので、流し台で洗うことにした。
    「そんなことはない。」
     黄飛虎は前屈みになってフォークなどの小物を洗う。傷だらけの武骨な指でありながら、丁寧に丁寧にゆすいでいる。
    「頼みを聞いて欲しいと頼んだのは、某だ。とても楽しかった。ありがとう、マスター。」
     立香は、急に「マスター」と呼ばれ、ドク、と激しく動悸が脈打った。
     彼は、いつも立香のことを「主」と呼ぶのだが、かしこまったときになると「マスター」と呼び方を変えるのだ。わざとなのか、そうじゃないのかは、分からない。
     主、と言われてもいいのだが、マスターも、悪くない、のだが。
     なんて、卑怯なんだろう。この男は。
    (突然言われると、緊張しちゃうよ・・・。)
     黒猫パンケーキを突然歌われた時と同じくらいの昂ぶる動悸をポーカーフェイスで装う立香。彼にきっと、他意はない。
    「もし、良かったらでいいのだが・・・また、このような機会があるなら、また誘って欲しい。某はまだここに来てから日が浅い。このカルデアのことを、もっと知りたいのだ。」
     へ、と腑抜けた声を出してしまう立香。「いいですよ!あ、それなら・・・。」とすぐに切り替える。
    「今度焼き芋を作ろうと計画してまして、一緒に食べますか?」
     皿を洗い終え、布巾で拭きとる。金眼神鶯が傍に近づき、小物を仕舞ってくれた。
    「焼き芋?甘いのか?」
    「ええ、とっても。去年、ボイジャーくんが食べたいって言い出してから、すごく好評なんですよ。おいもの品種ごとに味も全然違うので、それを見つけるのも楽しいですよ。」
     ほお、と黄飛虎は感嘆のような、納得したようなため息をもらす。金眼神鶯も黄飛虎の肩に戻り、同じような仕草をする。
    「是非とも、参加したいものだ。」
     立香も、うんうん、と頷く。
    「それじゃ、日程が決まったらまた呼びますね。」
    「承知した。片付けるものはこのくらいか・・・では、某は部屋に戻ろう。」
     カタリ、と最後の皿を食器棚に戻した後に腰に巻いたエプロンを外し、厨房から出る。
    「黄飛虎さん。」
     立香は、カウンター越しから、声をかけた。
    「また、一緒に出撃する機会があったら、よろしくお願いしますね。」
     手を振りながら、甘く、甘く、はにかんだ。
     黄飛虎は金眼神鶯と共に振り向くと、ああ、と頷き、しっかりとした足取りで、食堂をあとにした。
    〈完〉
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    Kurenoria

    DONE黄飛虎と一緒にパンケーキ作る(そして黒猫パンケーキ歌わせる)話③
    ※藤丸立香♀️前提。限界オタク的な発言が多い。
    ※第三者目線だけど、なぜか限界オタク的な発言が多い。
    ※黄飛虎の息子たちが出てきます。息子たちの設定・性格は全部捏造してます。
    これで最後です。
    黄飛虎と一緒にパンケーキ作る(そして黒猫パンケーキ歌わせる)話③ 二人はこの後同じ工程を何度か繰り返し、人数分のパンケーキを作り終えた。
    「これで完成だな。」
     むふふ、とドヤ顔になる立香。
    「パンケーキと同じくらい甘いですね。これはあくまで土台ですよ。ど、だ、い。」
    「土台?他にも何かあるのか?」
     立香はよくぞ聞いてくれました!と、いそいそ用意する。
    「実はクリームと果物もあるんですよ。これを添えれば完成です!」
     立香が用意したのは、籠いっぱいの果物と、ホイップクリームとチョコスプレー。
    「これはまた、甘いものばかりだな。」
    「パンケーキはこれがないと面白くないですから。」
     立香は試しに自分の分のパンケーキにホイップクリームをかけた。シューと小気味よい音が厨房に響き、とぐろを巻くように一回転すると、パンケーキの表面があっという間に真っ白になった。続いてチョコスプレーをかけると、今度はカラフルポップな仕上がりになった。ついでに果物の中から、シロップがしみこんでいるチェリーをおひとつ、のせた。
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    DONE黄飛虎と一緒にパンケーキ作る(そして黒猫パンケーキ歌わせる)話③
    ※藤丸立香♀️前提。限界オタク的な発言が多い。
    ※第三者目線だけど、なぜか限界オタク的な発言が多い。
    ※黄飛虎の息子たちが出てきます。息子たちの設定・性格は全部捏造してます。
    これで最後です。
    黄飛虎と一緒にパンケーキ作る(そして黒猫パンケーキ歌わせる)話③ 二人はこの後同じ工程を何度か繰り返し、人数分のパンケーキを作り終えた。
    「これで完成だな。」
     むふふ、とドヤ顔になる立香。
    「パンケーキと同じくらい甘いですね。これはあくまで土台ですよ。ど、だ、い。」
    「土台?他にも何かあるのか?」
     立香はよくぞ聞いてくれました!と、いそいそ用意する。
    「実はクリームと果物もあるんですよ。これを添えれば完成です!」
     立香が用意したのは、籠いっぱいの果物と、ホイップクリームとチョコスプレー。
    「これはまた、甘いものばかりだな。」
    「パンケーキはこれがないと面白くないですから。」
     立香は試しに自分の分のパンケーキにホイップクリームをかけた。シューと小気味よい音が厨房に響き、とぐろを巻くように一回転すると、パンケーキの表面があっという間に真っ白になった。続いてチョコスプレーをかけると、今度はカラフルポップな仕上がりになった。ついでに果物の中から、シロップがしみこんでいるチェリーをおひとつ、のせた。
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