おかえり甲板から精一杯身体を伸ばして、遠く消えていく影を見送る。ルリアなどはそれこそ、その影が完全に見えなくなるまで一生懸命手を振り続け、見えなくなっても尚、縁に手を掛けてつま先立ちになって、暫くそのまま景色を眺めていた。
「行っちゃいましたね」
もう何度となく繰り返したその台詞に、応えるものだっていつも変わらない。
「今度も、無事に帰ってくるよ」
これはある意味で願い、あるいは希望だ。こういったものは口に出せば現実になると聞いたことがある。なので、こうやって、……いつも同じやりとりになってしまうのはある意味、仕方ない。ルリアはそれを聞いて「そうですね」と寂しげに笑い、そこから動けない僕の前を通って、艇の中へと消えていく。ぱたぱたと軽い足音が彼女の後を追い、扉が閉まる音を最後に、はたりと途絶える。
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