一方通行の恋 鋼と待ち合わせをしている。
来馬が住んでいるマンション近く、さして広くもない公園のぽつんとあるベンチに座って待っている村上は、時折冷たい風に吹かれても微動だにしない。午後の柔らかい陽射しを受けて、目の前で紅葉した落ち葉がカサカサと風に踊らされ、舞っている様をじっと見つめて楽しんでいるようだ。そんな様子を来馬は、ベンチから数メートル離れた公園の出入り口にある自販機で飲み物を選びつつ眺めている。
隊を結成した頃の村上は、口数も少なく黙々と任務をこなすだけだったが、太一や今ちゃん、ボーダーの仲間ができるにつれ居場所ができて安心したのか心を開くようになった。一時期、村上のSEに関わった過去のいきさつによる一方的な思い込みで、荒船との関係がよくない状態になりそうなため介入したこともあったが。
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