六月の花嫁 お式に呼ばれた。お葬式とかではなく、結婚式に。
自宅のポストに淡い桜色の封筒が届いたのは、まだ肌寒さが残る春のはじまりだった。
「……てがみ?」
柔らかな色をたたえた封筒の、おもてに並ぶ文字には見覚えがある。中学と高校時代を一緒に過ごした親友の手書き文字だった。見間違えるはずはない、彼女に似た端正な字。ここ数年は流行りの感染症のこともあって、ちっとも会えずにいた友人のひとりだった。
電話番号だってメッセージアプリのアカウントだってお互い知っているのに、わざわざどうして。思いながら封筒をひっくり返してみれば、見知らぬ男性のなまえの隣に、思い描いた女性のなまえが連なっている。
「えっ、結婚するの、あの子!」
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