「羨ましいですわ、光秀さまと縁日に行かれるなんて」
「本当。仲睦まじい兄妹ですわね」
「まあ、妹が坂本に帰る前に一回くらいはお祭りに連れていかないとね」
女房たちに見送られながら安土城を出たのは先程のこと。
城下町はまるで真昼のような光の渦に包まれ、今が夜であることを忘れるくらい人々が行き交っている。
「綺麗……」
ありふれた言葉であるが、ほたるの口からはそれしか出てこなかった。
夜と言えば闇に紛れ、任務をこなすことが多いからだろうか。このように灯りの下にいることには慣れない。
「そうだね、夜の中で見る君はいつもと違う雰囲気があって綺麗だね」
隣から聞こえてくる言葉を幻ではないかと思い、思わず光秀の顔を見つめる。
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