『再起の狼煙』
ああ、あのまま私の事なんか忘れてくれたら良かったのに。私の事なんか忘れて、そのまま…―。
「…酷い人ですね、君は。こんな遠方までわざわざ足を運んでまで、私を嘲笑いに来たのですか?」
夜は明け、旅は終わった。それでも、一度結ばれた絆は途絶える事なく。旅路を共にした皆と手紙のやり取りをして、機会があれば会って近状の報告やら世間話やらしたりして。
穏やかな日常だった、長く続くモノだと勝手に思っていた。そんな保証は、何処にもなかったのに。
「テメノス・ミストラルの名すら、他人のモノに成り果てた。私には、もう何もない。」
気付いた時には、手遅れだった。それは、随分と前から計画されていたのかもしれない。もしかしたら、教皇イェルクが死んだあの日から。
2027