クロツルバミノヨル 今夜も厄介な案件に頭を抱えつつ、なんとか残業を終えて帰路につく三成。寒い真冬の帰り道に、いつものように足が向いたのは左近が営む小料理屋だ。
ほかほかの白いご飯と、優しい味の手作り惣菜と、熱い味噌汁で身体を温めたい。
時刻はもうラストオーダーの九時半をとうに過ぎているのだが、疲れた頭にはそんなことは全く無い。店の前まで来て暖簾が仕舞われているのを見て初めてそのことに気付いた三成は、軽くため息を漏らした。
「左近の……味噌汁が……」
しかし、暖簾は出ていないものの店にはまだ明かりが灯っている。入り口の引き戸に手をかけると、鍵はかかっていない。そのまま戸を開ければ、中には一人だけ先客がいた。
左近はその先客の隣に腰掛けて、ゆったりと二人で酒を傾けているらしかった。
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