モーテル 橙の常夜灯が、飲んだ空き缶を照らし出すモーテルの一室。
荒れた寝具を横目に、焼き鬼斬りはHOPEに火を点けた。
自分に合う煙草を探して5年、フィルタの無い煙草が好きなことに気がついては、HOPEを好んで吸うようになった。鞄にはストックが2、3箱ある。
勢いよく1本を吸い終わり、2本目に手を伸ばした時、声が聞こえた。
「似合わないね」
息の上がりが収まっていない掠れた声。冷凍焼き鬼斬りの声だった。
冷凍は荒れた寝具の隙間から顔を出すと、備え付けの寝巻を素肌に羽織って焼き鬼斬りの隣りに座った。冷たすぎる肌を滑る汗が、滴らずに凍る。
冷凍は、ガラステーブルに置かれたままのぬるい酒缶を思い切り傾け、ごくりと喉を鳴らした。
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