ゆめ「この間、夢を見たんだ」
胸元に頭を押し付けながら萩原がぽつりと口にした。俺とは違って指通りのいい髪を手櫛で梳かし続きを促せば、回されている腕に力が少し込められた。
「覚えてるか? 二年前の、十一月七日…」
「あぁ、忘れらんねえよ」
「そっか。…その日の夢でさ。夢のなかの俺、吹き飛ばされちまうんだよね」
いやに凪いだ声でそう言うものだから、こいつがどこか遠くへ行ってしまうような気がして、つい、強く抱き締め返した。鼻腔をくすぐるシャンプーの匂いや腕に閉じ込めたぬくもりにざわめいた心を落ち着かせていると、苦しかったのか、背中を軽く叩かれる。仕方なく腕を緩めてやれば代わりに足が絡められた。
「…防護服、着てなかったのか」
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