等価交換【西南】「隼人」
学校を巣立つ日。
校庭の桜を見上げていた隼人に、背後から声をかけた者がいた。
「瞬!今までどこにいたんだ?お前と写真を撮ろうと思って、さっきまで探してたんだぞ」
「おや、そうだったのかい?それは申し訳ないことをしたね」
その言葉とは裏腹に瞬の声に申し訳なさがあまり感じられないのは、いつものことだ。
「お詫びと言っては何だけど……ほら、これ」
「ん、何だ?」
瞬の手に握られていたのは、
「これは、もしや……」
どうやら、制服のボタンのようだった。
「そう……恐らく、キミが考えているものが答えだよ」
瞬はそこで言葉を切り、妖艶に笑って隼人の耳元に唇を寄せる。
「……ボクの心臓、キミにあげる」
「な、……心臓?」
「……ふふ。『心』、とでも言った方がキミには伝わるかな?」
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