【曦澄】『苦くてろくなものじゃなかったけれど』なあ、これ。吸ってみないか。
悪友が耳打ちする。手元に示されたものは三本の煙草。もちろん校則違反だし、なんなら法律違反でもあった。
「どこから持ってきたんだ、こんなもの」
「まあまあ、いいだろ、どこだって。大丈夫、普通の煙草だからさ」
「何を根拠にそう言えるんだ、お前……」
胡乱げな顔をする江澄に構わず、魏無羨はにやっと笑うばかりだった。
「いいじゃん、細かいことはさ。それより、なあ、興味ないか? 試しに一本だけ吸ってみようぜ」
「臭いついちゃわない? 教室に戻った時にバレるかも」
懐桑の言葉に、それも大丈夫と、ガムを出してきた。そういうところばかり、抜け目がない。
昼休み、屋上の給水塔の裏でこそこそと集まって何をしているのか。煙草だなんて、見つかったら怒られるに決まっている。
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