光熱費が高い話『―――年に一度の記録的な寒波が押し寄せています。内陸でも雪が降る地域が――』
窓枠のサッシから冷気が染み入り、底冷えするアパートは光熱費が馬鹿にならない。気軽に暖房をつければ、思わず目が飛び出るような請求書が来ることは想像がついた。夜になると顔を白くして震えはじめる犬飼を見兼ねて、近所のホームセンターへ向かったのは記憶に新しい。すべてセットで買うとまあまあな金額になったが、これで生活の質が向上するなら悪くない。と、影浦は最近まで思っていた。設置当初は、実家暮らしの時でもこたつに触れることは滅多になかったと、物珍しさからかキラキラと顔を輝かせた。「あったかーい、まさに文明の利器」と満足げに表情を緩ませて和むこいつを見るのは悪くねぇな。そう思っていたのも束の間。
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