拝啓お父さんお母さん、お元気ですか。おれは元気です。ちゃんと、お父さんとお母さん、シャチのお父さんとお母さんと約束した通り、シャチと一緒にいます。シャチも元気です。お家に住まわしてくれているローさんも元気です。
ローさんは、おれたちを二人でギリギリ一人前だからこれからも一緒にいろって言います。シャチはともかくおれはちゃんと一人前だと思うけど、シャチはまだまだ危なっかしいから一緒にいようと思います。
ローさんはお医者さんです。街から離れた静かなところに住んでいて、森で怪我していたおれたちを助けてくれて、お家に住まわせてくれています。仕事も任せられています。包帯を巻いたり、街に買いに行くときに荷物持ちをしたり、掃除したり、洗濯したりしています。料理は教えてもらってる途中です。
ローさんは街に住んでいるお医者さんじゃないのに、よく患者さんがやってきます。ボロボロのお母さんと子どもとか、痩せて骨が目立つおじいさんとか、お金の代わりにお花を持ってきた兄妹とか、それとは正反対のお金持ちの人もきます。嫌な人も、良い人も来ます。とにかくたくさん来ます。ローさんは言うことはあんまり優しくないけど、ちゃんと診てくれるし、お金がない人にはお金以外のものでいいと言います。でもお金持ちには容赦しません。だからお金持ちはもう来ないとか言います。だけどすぐにまた来ます。街のお医者さんよりローさんのほうが優秀だからって言ってます。
おれたちは今は包帯を巻くことしか任されてないけど、時間があると医療のことを教えてくれます。簡単な傷の手当とか、置いてある薬とか。もうちょっとしたら縫合とか注射を教えてくれると言っています。シャチは手先が器用で、細かい作業もおれより好きだから包帯を巻くより楽しそうと言っています。
ローさんとの生活は楽しいです。料理と医療のこと以外にも、文字の読み書きも、本の読み方も、計算も、なんで雷が落ちるのかも、動物のことも、狩りの仕方も、買い物の仕方も教えてくれます。なんでこんなに優しくしてくれるのか分かりません。