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    フィンチ

    @canaria_finch

    🔗🎭を生産したい妄想垢

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    フィンチ

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    付き合ってないふたり
    『月に願いを』のその後、気付いてくれた日の話

    #Sonnyban
    sonnyban

    欠けた月 ふっと目が覚めて、真っ暗な部屋の中で視線を巡らせる。カーテンの隙間から陽射しが差し込んでいるなんてこともなく、手繰り寄せた携帯端末の画面に表示されている時刻は早朝どころか深夜といっていい。サイレントモードにしているから通知音で起こされたということはないし、こんな時間帯であるから部屋だってシンと静まり返っていた。起きるにはまだあまりにも早すぎる時刻。だから、本当にただ、目が覚めてしまったのだと思う。
     何かを察して起きてしまったとか、なんて。そんなことを思いながら気まぐれに届いている通知を確認すると、暗闇に慣れてきた目はすぐさま彼の名前を見つけ出した。
    「サニー…?」
     どうしたのだろう、僕が眠っている時間帯に連絡してくるなんて珍しい。そして、メッセージを開いて目に入った言葉に、再び首を傾げることになる。
     
    《気付いたよ、ありがとう》

     何に、と疑問は抱いたまま。画面をスクロールしたのはごくごく自然な流れだったけれど、添付されている画像を確認したところでひゅっと喉が声にならない音を出した。だってそこに写っていたのは、伝えずにいた彼への…【サニー・ブリスコー】へのプレゼントだったから。 
     言いようのない感情が込み上げて、うまく呼吸が出来ない。喜んでもらえて嬉しい。それだけでいいはずなのに、いつの間にか視界は滲んでいた。
    「っ…な……んで…」
     自覚した途端に抑えが利かなくなって、頬をつたって枕を濡らしていく。なんで、どうして。泣くようなことじゃない、悲しくなんてない。身体を起こして拭ってみても、ぎゅっと目を瞑ってみても溢れ出るものを留めることはできなくて、小さな嗚咽のような声が口から漏れてしまう。
     あの時の気持ちに嘘はないのに、勝手にしたことだからと伝えずにいたのに、今、こんなにも――

    「そっか……僕、気付いてもらえて嬉しいんだ」

     口にした言葉がストンと胸の中に落ちていく。喜んでもらえたからという気持ちは勿論ある。でも、それを遥かに上回る『気付いてもらえた』ことへの喜びが僕の胸を満たし、溢れだしていた。
     嬉しい、でも困る。こんな感情は知らなかったから、どう受け止めたらいいか分からない。喜びと戸惑いで頭の中はぐちゃぐちゃで、呆然と彼からのメッセージを眺めているうちにいつの間にか眠ってしまっていた。

     次に目を覚ましたのはアラームの音で。画面に表示されたままのあの言葉が、夢ではなかったのだということを教えてくれる。
    (準備…しなくちゃ)
     こんな早くに起きる理由はひとつしかない。みんなが待ってるから、無理矢理にでも動き出さないと。朝の時間なんてあっという間に過ぎていく。パソコンを立ち上げている間に顔を洗い、部屋に戻ってきたところでベッドに放ったままの端末が目に入った。当然、画面には開いたままのメッセージが表示されているはず。
     あの言葉に、僕はなんて返したらいいんだろう。寝起きの頭では正解が見つからない。ううん、きっとそうでなくても今は考えがまとまらない。だからちゃんと落ち着いてから…
     そう言い訳をしながらも、気付けば彼の配信を開いてしまっていたのはもはや癖のようなもの。そして映し出された映像を目にした瞬間、じわりと視界が歪みだしたのが分かった。
    『アルバンがバースデーケーキを作ってくれたんだ、俺にも教えてくれなかったけど』
     画面の中で微笑むサニーに、耳に届く彼の声に、苦しいほどに胸が締め付けられる。
     そうだよ、言わなかったのに。伝えずにいたのに、どうして気付いたの。どうして、見つけてくれたの。どうして僕は、
    『ありがとう、アルバン』
     分かってる。同じことを返してくれたからだ。僕があの日にしたように、彼が【サニー・ブリスコー】の時間を僕に使ってくれたから。
    「どうしよう、サニー」
     そんなことを望んでいた訳ではなかったはずなのに、それが嬉しくて堪らなくて……少し、怖い。

    「僕、欲張りになったみたいだ」
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    フィンチ

    DONEふわっとしたMHパロ、ガノレク🔗×アイノレー🎭の馴れ初め
    仲良くなれるかな? とある村のアイルーキッチンで働き始めたアルバーンには悩みがあった。仕事自体は新入りということもあって覚えることも多く大変ではあるが違り甲斐がある。コック長は厳しくも懐の大きいアイルーであるし、手が足りてないようだと働き口として紹介してれたギルドの職員も何かにつけて気にかけてくれている。それならばいったい何が彼を悩ませているのかというと、その理由は常連客であるハンターの連れているオトモにあった。
    「いらっしゃいニャせ!ご注文おうかがいしますニャ」
    「おっ、今日も元気に注文取りしてるなアルバにゃん」
    「いいからとっとと注文するニャ」
     軽口を叩きながらにっこりと愛想の良い笑みを浮かべてハンターを見上げるアルバーンは、傍らに控えているガルクからの視線にとにかく気付かない振りをする。そう、このガルクはやってくるとずっとアルバーンを見てくるのだ。しかも、目が合っても全く逸らさない。ガルクの言葉など分からないから当然会話も成立しない。初めて気付いた時には驚きつつもにこりと笑いかけてみたのだが何か反応がある訳でもなく、それはそれは気まずい思いをした。だからそれ以来、気付かない振りをして相手の出方を窺っているのだが、今日も変わらずその視線はアルバーンを追っているようだった。
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