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    現代転生パロのサイラス×子テリ。リハビリ小説

    #サイテリ
    cyclic

    裸足と寝不足先生は時々知らない言葉で誰かとお話をしている。

    ─ピッ
    「お待たせテリオン。すまなかったね」
    今しがたまで通話していた端末をダイニングテーブルに置き、テリオンのいるソファの隣に座り直したサイラスの口から発せられるのはいつもの優しい言葉だ。先程まで電話の相手と知らない外国の言葉で話していたものとは違う、聞き慣れたイントネーションの落ち着いた声はテリオンに安心感をもたらした。
    「ううん、おしごとのお話?」
    「ああ、今度外国のお客さんと会う事になってね。彼らはこちらの言葉がわからないから、私が同行する事になったんだ。もう話は終わったから大丈夫だよ。さて、何ページからだったかな」
    長い指がノートの文字列をなぞっていくのを先回りして、先程取り組んでいた問題を小さな指が指し示すと、そうだったねと微笑んだサイラスがペンを走らせながら改めて説明をしてくれた。一人でも解ける宿題だけれど、サイラスと一緒に取り組むと不思議と理解が深まるし、時折混じる蘊蓄もちゃんとテリオンにわかるよう優しい言葉を使ってくれるから面白い。始まると長いけれど、テリオンが寝る時間には必ず終わるようにしてくれる。

    「これで終わりかい?」
    「うん、ありがと先生」
    おやすみ、と額にキスが降ってくる。毎日寝る前に欠かさず贈られるそれは、テリオンが悪い夢を見ないためのおまじないだ。胸が安心でいっぱいになったテリオンは素直に寝室に向かう。こうしてサイラスを独り占め出来る時間は、テリオンにとっては何物にも代えがたいものだった。整えられたベッドの中に潜り込み、左側を広く空けて丸まったテリオンは、ふわふわの布団の中ですとんと眠りにおちていった。


    「ん…」
    ふと目が覚めた。感覚からするともう真夜中のように感じられるけれど……確認するともっと眠れなくなってしまいそうなのでやめておいた。目を閉じたまま、指先で隣を確認するとひんやりとしており、サイラスがまだ寝室に来ていない事がわかった。
    「(せんせい、まだかな……)」
    サイラスはたくさんの人から尊敬されるくらい頭がいいのに、何故か自分の事には鈍くて無意識に無理をしてしまう様子を共に暮らすテリオンは何度も目の当たりにしている。朝起きてベッドにいないと思ったら書斎で突っ伏して眠っていた時はびっくりしたし、寝てる間についた本の跡で顔がしばらく面白い事になっていた。大事な本に涎まで垂らして、あんな姿を生徒たちが見たらどんな顔をするのだろう。
    自分の名前を呼びながら目を覚まし、がばりと机から顔を上げるサイラスの姿を思い出して、テリオンは目を閉じまたまま思い出し笑いをしてしまった。押し留めようとしていた眠気はクスクスという笑い声で霧散していった。
    「(……よびにいこう)」
    寝てしまっていたら起こしてあげたいし、お仕事をしていても声を掛ければ一緒に寝てくれるかもしれないと思い、そろりとベッドから降りる。裸足に床の冷たさはむしろ心地よかった。書斎のドアの隙間からは細く光が漏れていて、サイラスの所在を教えてくれている。かすかに話し声が聞こえるから、また誰かと通話しているのだろうか。

    「(またがいこくのことば……?)」
    そおっとドアの隙間から覗いてみると、やはりサイラスは端末を片手にまた誰かと通話をしていた。時々途切れながら、普段使いのものとは違う言葉をテリオンの耳にも聞き取ることが出来た。
    「─……この世界にも……十二神とは……ガ…………可能性も……。それ……、私……あの子に二度と武器を………ない……だ」
    「………あの子は何も……。彼とは違う道を………オルステラの……思い出して欲しいなどと………う資格………無い…。あの子を見つける事すら………たのだから」
    聞こえてくる会話は知らない単語だらけで、テリオンには到底理解出来ないものだった。
    「(おるすてら……?『あの子』ってだれ……え、あれ?おれ……どうして……)」
    知らない言葉だ。初めて聞く言葉なのに知っている。"理解出来ない"という事が"解る"。
    まるで言葉が勝手に頭の中に浸み込んでくるような違和感のせいか、いつのまにかひんやりとした足先を擦り合わせる。
    通話は尚も続いている。砕けた口調からすると、相手は気の置けない仲なのだろう。
    先生、その言葉はなに?誰と話してるの?彼って、あの子って誰?
    聞きたいことがたくさんあったが、疑問を投げかける気にはなれなかった。優しいサイラスのことだから、テリオンに変わったことがあったら放っておくなんてことは有り得ない。心配させてしまうかもしれない。二人の関係が変化してしまうかもしれない。今の日常は疑問の対価として差し出すにはあまりにも大切過ぎた。

    扉の外に自分がいる事に気付かれないよう、音を立てずに寝室に戻り、ベッドの右側に蹲る。早く隣に来た先生に背中をあやしてほしい気持ちと、不安定になっていることを悟られたくはないという気持ちがぶつかり合う。

    考えないようにしようとしても、気付いてしまった以上自分の中の未知から意識を逸らすことは出来そうになかった。
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    裸足と寝不足先生は時々知らない言葉で誰かとお話をしている。

    ─ピッ
    「お待たせテリオン。すまなかったね」
    今しがたまで通話していた端末をダイニングテーブルに置き、テリオンのいるソファの隣に座り直したサイラスの口から発せられるのはいつもの優しい言葉だ。先程まで電話の相手と知らない外国の言葉で話していたものとは違う、聞き慣れたイントネーションの落ち着いた声はテリオンに安心感をもたらした。
    「ううん、おしごとのお話?」
    「ああ、今度外国のお客さんと会う事になってね。彼らはこちらの言葉がわからないから、私が同行する事になったんだ。もう話は終わったから大丈夫だよ。さて、何ページからだったかな」
    長い指がノートの文字列をなぞっていくのを先回りして、先程取り組んでいた問題を小さな指が指し示すと、そうだったねと微笑んだサイラスがペンを走らせながら改めて説明をしてくれた。一人でも解ける宿題だけれど、サイラスと一緒に取り組むと不思議と理解が深まるし、時折混じる蘊蓄もちゃんとテリオンにわかるよう優しい言葉を使ってくれるから面白い。始まると長いけれど、テリオンが寝る時間には必ず終わるようにしてくれる。
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    ─ピッ
    「お待たせテリオン。すまなかったね」
    今しがたまで通話していた端末をダイニングテーブルに置き、テリオンのいるソファの隣に座り直したサイラスの口から発せられるのはいつもの優しい言葉だ。先程まで電話の相手と知らない外国の言葉で話していたものとは違う、聞き慣れたイントネーションの落ち着いた声はテリオンに安心感をもたらした。
    「ううん、おしごとのお話?」
    「ああ、今度外国のお客さんと会う事になってね。彼らはこちらの言葉がわからないから、私が同行する事になったんだ。もう話は終わったから大丈夫だよ。さて、何ページからだったかな」
    長い指がノートの文字列をなぞっていくのを先回りして、先程取り組んでいた問題を小さな指が指し示すと、そうだったねと微笑んだサイラスがペンを走らせながら改めて説明をしてくれた。一人でも解ける宿題だけれど、サイラスと一緒に取り組むと不思議と理解が深まるし、時折混じる蘊蓄もちゃんとテリオンにわかるよう優しい言葉を使ってくれるから面白い。始まると長いけれど、テリオンが寝る時間には必ず終わるようにしてくれる。
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