おせおせ。ひけひけ。(仮) 夏の暑さもだいぶん落ち着いた頃。
放課後の喫茶店。
「伏黒。
で、どこまでいったん?」
ずい。と視界いっぱいに虎杖の顔。その端に、にやついた釘崎の顔がある。
カップに注がれた一滴も減っていないブラックコーヒー。そこに映った自分の顔は、いかにもげんなりといったふうだった。
「何の話だ」
わざとらしいと思いながらも知らぬふりをすれば、肩にどかりと腕が乗る。
「何って。俺から言わんとダメ?」
「言わせるの? 虎杖に」
「何だよ。言えばいいだろ」
「うわ。そっけな」
「もっと照れるとか、積極的に報告するとかならかわいいもんなのに。何よ面白くないわね」
「面白くない」か。そう言われるとそうかもしれない。「あの人」も、実はそう思っているかもしれない。
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