水も滴る無惨様を乾かしてフワフワにするシボ 一緒に風呂に入った後、濡れた髪を乱雑にまとめて寝ようとする黒死牟を捕まえて、無惨が銀色のシャレオツなドライヤーで地肌や髪を労わりながら、ツヤツヤになるように乾かすことが二人の一日の終わりなのだが、この日は無惨がかなりお疲れだったようで、「乾かしてくれ」と頼み、黒死牟はヘアケア用のタオルで自分の長い髪をターバンのように包み、椅子に座った無惨の髪を乾かすこととなった。
無惨の髪を乾かすなど畏れ多すぎて、ドライヤーを持つ手が震えてしまうが、そんな黒死牟が気にならないくらい、無惨は今にも眠ってしまいそうな状態である。
そんな無惨の負担にならないように手早く、そして髪を傷めないように仕上げなくてはいけない。無惨の髪はやや癖が強いのだが、艶とコシがあり、とても綺麗な黒髪だ。水気をしっかりタオルで吸い、てのひらで温めたヘアオイルを、毛先を中心に揉み込んでいく。爪の先で髪を傷付けないように丁寧に手櫛を通し、手を洗ってからドライヤーの風を遠くから当てる。
うとうとする無惨の寝顔がとても可愛い。お疲れなこともあるだろうが、人にこうやって髪を触ってもらうのは気持ち良いのだ。毎晩、無惨がしてくれているので、とてもよく解る。
無惨の指の動きから、その後のベッドでのあれこれを想像して自分は少し卑猥な気分にもなるのだが、今の無惨にそのような余裕はなさそうで、睡眠欲がすべてを上回り気持ち良さそうにこくりこくりとしている。なので、一秒でも早く乾かしてベッドにお運びしようと黒死牟は思うのだ。
だが、無惨の髪の手触りが良すぎて永遠に触っていたいと思い始めたのだ。普段、このドライヤーを意識して見たことがなかったが、メニューによって温度や風の強さも違う。頭皮用、毛先用、根本のボリュームアップ用と何度も調節して、黒死牟は無惨の髪を徹底的に乾かしている。
無惨の髪は短いので、既に乾いているのだが、風を当てすぎてフワフワになった無惨の髪が可愛くて、ずっとよしよしと撫でつつ、髪に指を通していた。
そんな時、少し眠気がとれた無惨は鏡の映る自分の姿を見て一気に眠気が吹っ飛んだ。
普段は癖毛のメリットを活かしまくったセクシーなウェーブヘアだが、黒死牟に任せたが為に癖毛のデメリット全開の通常の2倍近くに頭が膨らんだフワフワヘアに仕上がったのだ。
「めちゃくちゃ可愛い……」
鏡越しに見る黒死牟の目はハートを散りばめてキラキラと輝いている状態だが、無惨は久し振りに見るフワフワの自分の頭に愕然としていた。
「お前には絶対に頼まない」
考えたら濡れたままの髪の毛を放置して寝る男だ。髪が傷むとか、髪型がどうとか意識する男ではない。それをすっかり忘れていた自分が悪いと思い、明日の朝、シャワーを浴びて、しっかりとやり直そうと心に誓う無惨だった。