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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
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    むざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
     そんなストレスマックスの零余子のストレス発散方法。
     暗い部屋の中でノートパソコンを開き、「P」のロゴをクリックする。
    「今日もブクマいっぱい、あざーっす♡」
     そう、零余子は禁断のnmmn二次創作、上司2人のBL作品をSNSに投稿しているのだ。

     零余子は学生時代から腐女子の物書きとして活動していた。マイナージャンルを渡り歩いていた為、仲間内で楽しむ程度だった。
     就職した時、見目麗しい議員と彼を守る美形秘書……これは2次元を軽く越えてるな、と思った。更に2人はめちゃくちゃ距離が近い。不必要に耳打ちするので、互いの吐息が触れ合ってない!?  と見ているこちらがドキドキするし、黒死牟が近くに来ると無惨の香水の匂いがする、リアル移り香というものを初めて体験した。
     しかし、2人の性格はアレである。
     パワハラが服を着て歩いているような似た者同士だ。こんなやつらが互いのナニをしゃぶり合ってる情緒なんて、ある筈がねぇ!!
     絶対あるわけがない。だがら、どんな妄想したって妄想で許される。泣いて帰った夜、腹癒せに彼らを某掲示板で検索すると、想像以上にヒットした。nmmnの為、徹底した検索避けがされているが、これ、うちの上司だな……と、すぐに解った。
     零余子は普段なら秘書×議員派なのだが、2人のいちゃつき具合や力関係を考えると、議員×秘書の方がしっくり来るな……と思い、フォロワー限定でSSを投稿したら、相互くらいしかフォロワーがいなかったのに、一気に千人を越えて二度見どころか三度見した。
    「れいよしさんの作品、めちゃくちゃリアリティがあって感動しました!」
     そりゃそうだろ、毎日目の前で見てんだから……でも、あんたたちが考えているような、乳繰り合う関係じゃないと思うよ、と思いながらも、日々2人を観察し、ゲットしたネタをすぐにSSとして投稿した。
    「鳴女、私のワイシャツ、クリーニングから返ってきているのはあるか?」
    「はい、ございます」
     そう言って鳴女はハンガーに掛かった状態のワイシャツを手渡した。普段、こういう作業は秘書の黒死牟が行うが、今日、彼は午前半休を取っている。
     無惨がジャケットを脱ぐと、明らかにサイズの合っていないワイシャツを着ている。大きすぎて肩が落ちており、袖もブカブカである。
     珍しいデザインのシャツだな、と皆が思っていると、無惨は小さく舌打ちした。
    「間違えて黒死牟のシャツを着てしまった」
     その場にいた全員が固まった。爆弾を放り投げた本人は「着替えてくる」とワイシャツを持って洗面所へ行ったが、何をどうすれば、全く体格の違う秘書のワイシャツを着る場面があるのだろうか。
     そのネタを投下すると、高速連打のようにいいねが増えた。
    「れいよし先生! 彼シャツですか!?」
     まぁ、彼シャツだな、うちの秘書は受けだけど、男だから彼だよな。でっかい受けのシャツを着てくる攻めってロマンがあるよなーと思いながら、零余子は丁寧にレスしていく。
     楽しい、こうして承認欲求を満たされることもストレス発散になっている。
     あんな色気のないパワハラおばけのオッサン2人が、こんなイチャイチャしているなんて考えられないが、考えられないからnmmn同人には夢があるんだ、と零余子は考えていた。
    「零余子!」
     と自分を怒鳴る2人の声を想像したら、とてもじゃない色気のある台詞を吐くとは思えない。
    「どうした、黒死牟、その可愛い顔を見せておくれ」
    「無惨様……恥ずかしゅうございます……」
     絶対言わねぇし! 大体、あんなパワハラ男(無惨)なんて、絶対セックス下手だよ、独り善がりで早漏っぽいし、パワハラ男(黒死牟)はマグロだ、あいつ絶対マグロ。そんなことを思いながら、自分の持てる力を振り絞って小説を書き上げる。
     そして、次々に届く感想。その中には「れいよし先生、本はいつ発売ですか!?」と同人誌を出して欲しいという声が上がり始めた。
     本来、二次創作は公式のお目こぼしで成り立っているもの、ましてやnmmn同人なんて公式に見つかれば、界隈終了ではなく、自分自身が終了するかもしれない。
     だが、待ってくれている読者がいる。それに、絶対、あの2人が同人誌なんて見ることないし。
     リクエストにお応えして、零余子は本を作った。
     勿論売れ行きも良く、在庫はほぼ捌けた状態である。鬼2人にどやされながら、仕事が終わってから頑張って作った本である。喜びもひとしおで、常に持ち歩いていた。
     そう、仕事に行く時も……。
    「お疲れ様でした……」
     ヘトヘトになりながら残業を終え、挨拶をして帰る時、疲れていて無惨の前で鞄を落とし、中身をぶちまけた。
    「も、申し訳ございません!」
     急いで搔き集めようとしたら、普段はガン無視する筈の無惨が、こんな時に限って手伝ってくれた。
     うわ、マジやめて、あっち行って! という零余子の祈りも虚しく、無惨は「議員×秘書 R-18 れいよし」と書かれたA5サイズの本を手に取った。
    「あ、有難うございます!」
     無惨から取り返そうとしたが、ひょいっと手を挙げられると小柄な零余子では手が届かない。こいつ、身長もあるし、手足長いな、クソッ! と零余子は心の中で舌打ちする。
     しかし、そんなことを思っている場合ではない。中を読まれたら死ぬ。それは社会的に死ぬということではない、マジで死ぬ。こいつら、東京湾に人を沈めることなんて朝飯前だ。
     零余子の願いは何一つ神には届かず、無惨はパラパラと本を開いた。
     はい、死んだー。
     零余子は死を悟った。
     お父さん、お母さん、ありがとう。
     思い出が走馬灯のように脳内を過るが、無惨は平然と零余子に本を返した。
    「よく書けているな。この界隈だと人気だろう?」
    「え? ええ!?」
    「ただ、うちの秘書はもっと可愛く鳴く。覚えておけ」
    「えぇぇぇぇぇー!?」
     翌日、黒死牟に呼び出され、午前中丸まんまお説教タイムになった。
     無惨にチクられたせいで、「れいよし」という名前で活動していることがバレ、SNSの全てのアカウントをチェックされた。
     聞けば、無惨も黒死牟も自分たちがBLで人気のジャンルだと知っており、「れいよし」という作家が急激に伸びていることも知っていたが、まさか零余子とは思わず、情報漏洩の観点から、こっぴどく叱られた。
     だが、零余子は腐女子である。
     お説教タイムが終わった後、堂々と黒死牟に聞いたのだ。「可愛い声で鳴くって本当ですか?」と。
     お説教タイムが延長されたのは言うまでもないが、ここまで怒るってことは本当なんだろうな、と思い、首筋にうっすらと見える鬱血した痣にニヤニヤが止まらなかった。
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    TRAININGむざこく30本ノック④延長戦
    7日目
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく 無惨と黒死牟が仕事上だけでなく私生活でもパートナーであると公表してから、どれくらいマスコミに囲まれ、あることないこと書かれるかと心配していたが、取り立てて大きな生活の変化はなかった。
     職場は二人の関係を元から知っていたし、世間も最初は騒ぎ立てたものの「鬼舞辻事務所のイケメン秘書」として有名だった黒死牟が相手なので、目新しさは全くなく、何ならそのブームは何度も来ては去っている為、改めて何かを紹介する必要もなく、すぐに次の話題が出てくると二人のことは忘れ去られてしまった。

     そうなると納得いかないのが無惨である。
    「わざわざ公表してやったのに!」
     自分に割く時間が無名に近いアイドルの熱愛報道よりも少ないことに本気で立腹しているのだ。あんな小娘がこれまたションベン臭い小僧と付き合っていることより自分たちが関係を公表した方が世間的に気になるに決まっていると思い込んでいるのだが、職場内だけでなく国内外でも「あの二人は交際している」と一種の常識になっていた上に、公表を称えるような風潮も最早古いとなると、ただの政治家の結婚、それだけなのだ。
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    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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