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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこく30本ノック
    8日目

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    口紅 あぁ、まただ。
     彼がプライベートで車を使用すると、必ずシートの下から口紅が出てくるのだ。
     毎度毎度、黒いケースにココマークが入った口紅だ。ただ、今回は白いケースで金色のココマークが入っている。
     このブランドを使うような女性とばかり付き合っているのか、それとも、ずっと同じ人と交際が続いているのか。
     小さな口紅が己の存在を主張するかのようで不愉快なので、見つけた時は問い詰めもせず速やかに捨てていた。
     しかし、こうして度々出てくると気が滅入る。それに一本五千円もすると知り、捨てるのがちょっと勿体無いな……と思っていた。
     ネットで調べた時、値段にも驚いたが、その深い赤の妖艶さに胸が痛んだ。
     女はたかが口紅一本に五千円も払う。彼に美しいと言われたいがためだけに。そして、その赤い唇で彼に愛の言葉を囁くのだ。
     彼がその赤い唇といとおしそうに見つめ、くちづけ、その女を抱くのだろう。
     その光景を思い浮かべると、嫉妬を通り越し、軽く絶望した。
     元より彼は同性愛者ではなく、何故か自分にだけ異様に執着し、こうして恋仲になったが、何度も浮気されているし、もっと言えば自分も浮気相手のひとり。そう、彼は既婚者である。
     一度も奥様と別れて欲しいなどと言ったことはない。そこまで身の程知らずではないが、浮気だけは許せず、される度に彼を責めた。
    「別に本気で付き合っているわけではない」
    「女性と浮気される私の悔しさが解りませんか? 万が一、子供でも出来たらどうされるのですか? 私を捨てますか? 奥様と別れるのですか?」
    「いちいち煩い! 愛しているのはお前だけだと言っているだろうが!」
     自分も浮気相手なのに、何を思い上がっているのだろうか。滑稽だと思いながらも、醜い感情を全身で彼にぶつけてしまう。
     いつも戒めているつもりだったが、ベッドでの甘い囁きにいつも夢を見てしまう。
    彼が愛しているのは自分だけだ、と。
     ベッドを軋ませ、シーツを握りしめながら彼を受け入れ、孕むことの出来ない腹で彼の熱を飲み込む。
     戸籍で結ばれることも、二人で子を作ることもできない。こんな小さな口紅一本で脆くも崩れるかもしれない関係なのだと、見つける度に胸が痛んだ。
    「おい、何をしている」
     背後から声がして、急いで車の外に出た。
    「掃除を……」
     そう返事した時に、彼は右手の口紅に気付いた。
    「どこにあった?」
    「シートの下に……」
     彼は口紅を取り上げ、キャップを開けると、白い口紅が出てくる。
    「白い……?」
    「あぁ、リップクリームだ。これが一番好きなのだが、最近白いケースに変わってな……って、お前!」
     体から力が抜け、その場に座り込んだ。まさかの真実に拍子抜けして、体に力が入らない。
    「口紅かと思って……」
    「浮気したのかと思ったのか?」
     頷くと彼は頭を優しく撫でてくる。
    「車で落とした筈なのに一度も出てこなかったのは、お前が浮気を疑って捨てていたのか」
    「はい……」
    「中の色は見なかったのか?」
    「……てっきり口紅だと思って……」
     まさか、こんなリップクリームを使っているとは思わなかった。そういえば、いつも艶々で綺麗な唇だと思っていたが、相変わらず金遣いが荒いし、美意識が高すぎる。
     いっぱい言いたいことはあるが、言葉が出てこない。呆然としていると、ぎゅっと抱き締められ、背中を撫でられた。
    「愛しているのはお前だけだと、いつも言っているだろう?」
    「だったら……こちらが不安になるようなことは……しないで下さい」
    「それは言ってくれるな」
     納得いかないが、浮気性だと承知の上で付き合ったのだ。それに遊び慣れた粋な雰囲気も好きだった。悔しいが、惚れた弱みだと諦めていた。はずだったが、本心を言えば、彼には自分だけを見ていて欲しいと思ってしまう。
     複雑な表情をしていたのか苦笑いし、こちらの胸ポケットにリップクリームを入れた。
    「私が持っていると失くすから、お前が持っていてくれ」
    「不便ではありませんか?」
    「使う時は言うし、お前が使ってもいいぞ。キスをすればこちらにも移るだろう」
     しっとりと柔らかい唇が自分の唇に触れる。
    「こんな風に」
     上目遣いで妖しく微笑まれ、角度を変えて何度もくちづけながら、車の後部座席に押し込まれた。
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    TRAININGむざこく30本ノック④延長戦
    7日目
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく
    シンプル、カジュアル、ラフなペアコーデで、公開用のオフショットを撮影するむざこく 無惨と黒死牟が仕事上だけでなく私生活でもパートナーであると公表してから、どれくらいマスコミに囲まれ、あることないこと書かれるかと心配していたが、取り立てて大きな生活の変化はなかった。
     職場は二人の関係を元から知っていたし、世間も最初は騒ぎ立てたものの「鬼舞辻事務所のイケメン秘書」として有名だった黒死牟が相手なので、目新しさは全くなく、何ならそのブームは何度も来ては去っている為、改めて何かを紹介する必要もなく、すぐに次の話題が出てくると二人のことは忘れ去られてしまった。

     そうなると納得いかないのが無惨である。
    「わざわざ公表してやったのに!」
     自分に割く時間が無名に近いアイドルの熱愛報道よりも少ないことに本気で立腹しているのだ。あんな小娘がこれまたションベン臭い小僧と付き合っていることより自分たちが関係を公表した方が世間的に気になるに決まっていると思い込んでいるのだが、職場内だけでなく国内外でも「あの二人は交際している」と一種の常識になっていた上に、公表を称えるような風潮も最早古いとなると、ただの政治家の結婚、それだけなのだ。
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    15日目
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか
    「ほら見たか!これで恐れるものなぞ何もないわ!」とかつてないほど昂るのか、「案外大したことないわ、つまらんな」と吐き捨てるのか、「太陽の方がやはりお好きで?」「白昼にも月は出ておるわ馬鹿者」みたいな気楽な会話になるのか
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか  それは初恋の憧れに似ていた。
     手の届かない遠い存在という意味か、遠い昔の燦爛とした断片的な記憶のせいか、その強い「憧れ」が根底にあるから黒死牟とは意気投合したのかもしれない。
     自分たちにとって太陽とは最も忌むべき存在であり、その反面、強く憧れ、恋い焦がれた存在であった。
     今でも朝日を見ると、今際の際を思い出し身構える。しかし、その光を浴びても肌が焼け落ちることはなく、朝が来た、と当たり前の出来事だと思い出すのだ。

    「今日も雲ひとつない晴天ですね」
     黒死牟が車のドアを開けると、その隙間から日の光が一気に差し込む。こんな時、黒死牟のサングラスが羨ましいと思うのだが、まさかサングラスをしたまま街頭に立ち、演説をするわけにはいかないので日焼け止めクリームを丹念に塗り込む程度の抵抗しか出来ない。
    2129

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    TRAININGむざこく30本ノック③
    17日目
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション 何か理由があって髪を伸ばしているわけではない。
     長い髪って手入れが大変ですよね、と言われるが、実はそうでもない。短い髪の時は月に一度は散髪に行かないといけなかったが、長い髪は自分で毛先を揃えるくらいでも何とでもなる。女性と違って髪が傷むだの、枝毛がどうだのと気にしたことがないので、手入れもせず、濡れた髪を自然乾燥させることにも抵抗がない。それに短い髪と違って、括っておけば邪魔にならないので意外と便利だし、括っている方が夏場は涼しいのだ。
     つまり、ずぼらの集大成がこの髪型だった。
     特殊部隊に入った時、長髪であることにネチネチと嫌味を言われたこともある。諜報活動をする時に男性のロングヘアは目立ち易く、相手に特徴を覚えられやすいから不向きだと言われ、尤もだなと思ったが、上官の物言いが気に入らなかったので、小規模な隠密班を編成する際の長に選ばれた時、全員、自分と背格好が近く、長髪のメンバーだけで編成し、危なげもなくミッションを成功させたことがある。だが、自分の長髪にそこまでこだわりがあったわけではなく、単なる反発心だけである。
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    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
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