ロイ×クウ(千ヤマ)(朝の支度)

最近ちょっと眠れるようになった気もするけどあいつら(部下達)が言うにはまだまだ全然寝てないらしい。
いや、でも調子悪くないし今日も頑張りますか〜と口にはする事はないけど思うだけ思って自室を出た。
手にした端末で一日のスケジュールを把握しながら廊下を進む、すれ違う奴と挨拶しながら食堂なんだか会議室なんだか娯楽室なんだかもうわからないとにかくみんなが集まれる一番部屋に入る。
「おはよう、クウラくん。コーヒー冷めてるよ」
「おはようございます…」
珍しく俺より先に一応この組織のNo.2ポジションにいる男がゆったりと一番座りごごちのいいソファーに座っていた。
俺はその向かいの広いだけで硬いソファーに座って積んであるカップを適当に取ってポットの中で冷めたコーヒーを注いだ。一口飲んでこの場がいつもと様子の違う事に気付く。
「あれ？」
いつもならもっと人がいて賑やかなのに部下達が全然いない。カウンターの中に給餌担当がいるだけだった。
「なんかね、西の方面で大型の獣群れがいるとかなんとかでライデンくんが何人か連れてったのよ。今日はお肉たっぷり食べられるって。毛皮はオルカくんに売ってきてもらうとか張り切ってたよ」
「はぁ…」
このところ情勢的には安定しているから大丈夫だろうと思うけど…なんて思いながら表情に出てたからなのか目の前に座るロイエさんは続けた。
「ライデンくんには何かあったらそのまま現場に行けるよう装備と部隊で行かせてるし、他の子達は情報収集兼ねてお買い物頼んでる」
「ありがとうございます」
「ライデンくんキミがよく寝てるからって僕の事叩き起こすんだよ、やんなっちゃう。年寄り労ってほしいよ」
「はは…っつかこんな時だけジジイにならんでくださいよ」
「朝起きた時が一番しんどいし」
「まぁ、俺の事気遣ってくれたライデンさんに免じて休んできてもいいですよ」
俺が端末の情報見ながら話をしているといつの間にかロイエさんは隣に座っていた。
「…ねぇ、クウラくんさ、最後にセックスしたのいつ？」
「なんですか突然…」
「純粋な疑問と…あとムラムラしてきた…かな…上にいる時は子育てもしてたし」
「はぁ…久しぶりなんですね…っつかここで言われても。どっか行ってきてくださいよ」
睨む気力もなくて呆れた顔で朝から年齢不詳な綺麗な顔で何を言ってるんだ…という目で見てやるがもちろんこの人がこんな位で効くわけがない。案の定距離を詰めて「ねぇねぇ」と聞いてくる。これが酒場にいる娼婦ならば返事すらしないけど、この人の押しの強さはなんだか苦手だ。
「だからここで…いう事じゃ…」
「誰も聞いてないし、聞かれてもいいでしょ。なんなら知りたいでしょ組織のトップの性事情」
「悪趣味だな…！もう忘れるくらいそんな事してねぇよ！」
ああ、もうヤケだ。包み隠さずそのまんま言ってやる。
こんな明日死ぬかもしれない所でそんな気持ちの余裕あるかよ。
「ふーん。ほんとに？」
「本当に。まぁ、不本意な状況でとかはあったけど…」
これは諜報活動で起きた事で銃弾受けたようなもんだと思ってる。あ、でも誰にも言った事なかったな…一人で墓まで持ってくつもりだったんだけど言ってしまった。この人にならいいかって。もしかしたら誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
「え、なにそれ、そいつ生きてんの？生きてたら殺りに行こうよ」
「あはは…もうどこにいるかもわかんねぇよ〜」
思ったよりマジ声のヘビーな返しに逆におかしくなってきた。
「……ならこれから僕といちゃいちゃラブラブしよう」
「なんでそうなるんだよ」
「いいでしょ。クウラくんとしたいなー」
「だから朝からする話じゃ…」
俺の手を、指を触ってくる義手じゃない方の手は当たり前だけど暖かくて血が通ってる。さっきから拒否してる言葉しか口にしてないけど、もう、視線を合わせたら先へ進む。