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    CQUEEN57235332

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    切島くん夢

    #hrak夢

    2.皆と私と頭の中の未来フィルム.2
    「ともだち………………?」
     憂無は目を僅かに見開く。上鳴は少し照れているのか表情を変えて言う。
    「そ、友達。この先どうなるとかわかんねーけどさ……いいんじゃね?」
     な? と上鳴は言った。憂無は差し伸べられた手を取り、握手する。
    「…………わかった」
    「んじゃ、改めてよろしくな! 前宮!」
     そうして憂無は上鳴と別れ、帰路に着く。
     友達……友達かあ………………。知らない響き、未知の心の動きに憂無はワクワクとしていた。憂無は自宅のドアノブへと手を掛ける。
    「ただいま!」
     ただいま、という声を聞き飯田家の面々はおかえり、と声を掛けてくれた。
    「遅かったじゃないか、憂無」
     と天哉。憂無は言う。
    「天哉が私を置いてったじゃん」
    「ム…………確かに、そうだが」
     それは悪かった! と天哉は謝る。憂無は自室へと足を踏み入れ、学習鞄の中からジャージを取り出した。
    「………………結局、救けてくれた人って雄英にいなかったのかなあ…………」
     溜息を吐き、衣装ボックスにそれをしまう、制服を脱いで着替える。憂無は赤革の手帳に今日初めて出来た友達の事を書いた。友達というのは初めてでよくわからないけれど──こんなにも心躍る事なのか、と憂無は微笑む。コンコンコン、とノックがされた。
    「はい」
    「ご飯、出来たぞ」
     天哉だった。憂無は頷いて手帳を閉じるとリビングへと向かう。
    「天哉ぁ、今日のご飯は?」
    「今日はハンバーグだぞ!」
     やったあ、と憂無は喜んだ。
     夕食の席にて、憂無は天哉の父と母に報告をする。
    「おじさん、おばさん。今日──私友達が出来たよ」
    「そうか、よかったなあ」
    「そのお友達ってどんな子なの?」
    「友達? 初耳だぞ俺は!」
     へへ、と憂無は笑う。そうして高校初日の話をし始めたのだ。
    「始業式と、ガイダンスと、自己紹介があったよ!」
    「やはり……そうなのか……!」
     と天哉。どうしたのか、と憂無は聞いた。すると。
    「…………一年A組は『個性把握テスト』があった」
     憂無は不思議そうに聞く。
    「『個性把握テスト』……?」
    「ああ。『個性』を自由に使って体力テストをやる……という事だった。そして」
     最下位は除籍されるという話だった……のだが……。
    「なんと、最下位除籍は相澤先生曰く……! 合理的、虚偽……!!」
    「合理的虚偽?」
    「そうだ! 生徒を追い込みやる気を出させる……! 俺は思ったよ……これが、最高峰とね……!!」
     そうなんだ、と憂無は羨ましいという感情を飲み込んで言った。もぐもぐと小切りにしたハンバーグを食べる。ジューシーな牛肉とケチャップが合っていてとても美味しい。憂無は白米も食べつつ夕食を全て食べ切った。
    「ごちそうさま」
     食器を流し台に置くと、憂無は自室へと戻る。雄英のカリキュラム等が書かれている書類をペラペラと捲って読んだ。流石最高教育機関、どこもしっかりしている、と彼女は思う。必要な情報を赤革手帳に書き込むと、憂無はベッドに寝転んだ。ふう、と溜息を吐く。現在の時刻は午後七時四十分。憂無はぐっ、と背伸びをした後勉強机の椅子に腰掛ける。配られた課題をやらねば、と彼女はシャーペンを握った。
     しばらくすると課題も終わって憂無は風呂に入り、寝る準備に入る。目覚まし時計を朝六時半に設定した。

     § § §

     ──────。
     
     § § §

     憂無は目覚まし時計が鳴るより先に目を覚まし、歯を磨きに行った。その後顔を洗って制服に着替える。そして英語や他の科目の予習をするのだ。それが終わり、リビングに出るともう既に天哉も天哉の母も起きていた。
    「おはよう、二人とも」
     声を掛けると二人からおはよう、と返ってきた。憂無はテーブルに着くと食パンをトースターで焼く。その後はバターを塗り、たっぷりとジャムを塗って食べた。甘いのとしょっぱい味が合っていて、とても美味い。憂無は牛乳多めのココアを飲んだ。
    「ごちそうさまでした!」
     そうして天哉と共に登校する。朝の電車はまあ、いつもの如く混んでいた。天哉に助けられ、やっとのことで憂無は電車から抜け出す。
    「やっぱり人多いなー……」
    「ああ、だが仕方がない。都心だからな。さあ、早く学校へ行くぞ!」
    「うん」
     憂無は天哉と共に雄英の門を潜った。途中で二人は別れ、憂無は普通科C組の教室へと向かう。当然のように人はいない。真面目な天哉と共に登校しているといつも一番乗りなのだ。憂無はあくびを噛み殺しコキリと首を鳴らす。数分が経つと、生徒が次々と登校してきて憂無に挨拶をしてきた。
    「おはよー、前宮」
    「うん、おはよう」
     今日から通常授業だ。憂無は教科書を見ていてあ、と声を上げる。
    「英語の教科書忘れてきちゃった……!!」
     朝に予習をした時うっかり机の上に置いてきてしまったのだ。憂無はしまった、と思ったが考え直す。
     …………天哉に借りればいいか。
     憂無はそう思い直し椅子に座り直した。後ろの席の心操が登校してくる。
    「おはよう。前宮さん」
    「あ、おはよう……えーっと」
     憂無は赤革手帳をペラペラと捲り心操のページを開く。
    「心操! おはよ!」
    「……ああ」
     心操は机に通学鞄を置くと席に着く。

     § § §

     授業が幾つか終わり、憂無はA組に行くとガラリとドアを開ける。
    「お、前宮! はよ!」
     と上鳴。憂無もおはよう、と返す。憂無は天哉の席に目掛けてスタスタと歩くと言う。
    「天哉! 英語の教科書貸して!」
    「また君は忘れたのか!?」
    「うん」
    「忘れないようにちゃんと確認しないか……!」
    「わかってるわかってるって」
     憂無は英語の教科書を借りるとさっさと自クラスへと戻って行った。上鳴が天哉に聞く。
    「な、なあ……飯田と前宮ってどんな関係……?」
    「身内だが?」
    「身内…………って名字違わね? あ、親戚?」
     それは、と天哉は言い淀む。そして。
    「すまないが……それ以上は本人から聞いてくれないか……! 俺から言うのは少し……憚られる……!」
    「お、おう……」
     ところで!
    「上鳴くん、君と憂無は一体どういう関係なんだい?」
     と天哉が逆に聞いてきた。上鳴はへへ、と笑って言う。
    「友達……みたいな?」
    「みたいな、とはなんだ。みたいな、とは」
    「だーからー! 友達だって! 友達!!」
     そんな話をしている二人の話を耳に入れつつ切島はちら、と憂無が出て行ったドアを見て入試の時の事を思い返す。
     自分を庇った女生徒。彼女は気絶し、その後どうなったかは知らない。ただ、思った。ああいうのは漢気があるやつだって。あ、そうか。あいつ……前宮っつーのか……。

     § § §

     憂無はクラスに戻り、英語の授業に向けて用意を始めた。ノートと筆記用具、そして借りて来た教科書を広げる。
    「……A組に知り合いでもいるの」
     と心操。憂無はうん、と頷いて言う。
    「そう。家族……兄貴分みたいなのがいるんだ」
    「そっか」
     ここで会話は打ち切られた。英語担当教員のプレゼント・マイクがやって来る。これで騒がしくも内容は普通の英語の授業が始まるのであった。
     ──授業が終わり、昼休み。憂無は昼食を摂りに大食堂へと向かう。クックヒーロー、ランチラッシュが作る一流の料理。それを安価で食べられるのだ。憂無はそれを知り、楽しみにしており、行列へと並ぶ。
    「人、多いなあ……流石雄英……」
     そう呟くと憂無は日替わり定食Aを頼んだ。今日の日替わり定食Aの内容は、ニシンの煮付けと春野菜のサラダ、味噌汁だった。飲み物は緑茶を頼む。
    「空いてる場所空いてる場所……っと」
     厳密に座る場所が定められている訳ではないが、大体科によって分かれている。憂無は普通科の面々が座る場所を探す。
    「………………」
     生憎と空いていないようだ。憂無はうろうろとトレーを持ったまま彷徨う。
    「お! 前宮じゃん!」
     憂無が声の主の方を向くと、上鳴が席に座ってパンを食べていた。
    「上鳴」
     憂無がトレーを持ったまま近寄ると上鳴は言う。
    「座る場所無いならここ座る? いいよな、お前らも。な!」
     上鳴は瀬呂と切島に言う。瀬呂と切島は快諾し、憂無は切島の隣に座る事となった。昼食を食べながら憂無は上鳴を除いた二人と交流する。
    「へえ、じゃ普通科なんだな!」
    「そうそう。入試落ちちゃってね」
    「あーあれも俺もキツかったわ」
     切島と瀬呂と話す憂無は白米を口に運んだ。煮付けを食べ始めると瀬呂が聞く。
    「じゃー前宮はヒーロー志望なワケ?」
    「うん、これでもね」
    「じゃあライバルだな!」
     と切島。昼食を食べ終わった憂無は二人──瀬呂と切島の事も赤革手帳にかく。上鳴が言う。
    「うわうまっ」
     前宮は覚えたい人の名前と似顔絵を手帳にかいている。それを見て上鳴は言ったのだ。
    「なーなー、瀬呂も切島も見ろよ! 前宮絵超うめーぜ!」
    「マジ?」
    「お、本当だ」
     流石に憂無も一斉に注目されると恥ずかしいのか、手帳を閉じてしまった。
    「なんで隠すんだよ」
     と上鳴。
    「流石にじっと見られてると恥ずかしいからさ……」
     憂無は言った。切島は言う。
    「まあ……嫌ならいーけどよ。そういう得意な事は胸張ってたらいいんじゃねぇかな」
     どきり。前宮の胸は高鳴る。上鳴と友達になった時とも違う、このドキドキ感。憂無は後で手帳に書く事を決めた。昼食が終わり三人と別れると午後の授業である。ヒーロー科はヒーロー基礎学だが、普通科は引き続き座学や普通の体育だったりするのだ。憂無はノートに板書を取りつつ赤革手帳を開き、先程の事に想いを馳せた。
     赤髪の、ツンツン頭の彼。私に胸を張れと言ってくれた。
    「……優しいなあ」
     ボソリと小さな声で呟く。天哉とはまた違う男子達と交流し、憂無の心象には新しい風が吹いて来た。勿論、いい意味で。憂無は先程の事を思い浮かべると耳まで赤くなってしまう。
     ……………………恋ってこういう事なのかな。
    「前宮」
     ……いや、まさかね…………はは……。
    「前宮!」
    「おい、呼ばれてるぞ」
     心操の声で我に返った。
    「は、はい!」
     憂無は慌てて立ち上がる。声が裏返ってしまった。恥ずかしい、そう思って憂無は教師の問いに答える。
    「F=13です」
    「よろしい」
     授業をあまり聞いていなかったので即席で計算して答えた。憂無はホッとして椅子に座り直す。また、手帳を見る。心持ちは恋する少女であった。終業のベルが鳴ると憂無は後ろの心操に声を掛ける。
    「心操……ごめん、ちょっとノート貸してくんない?」
    「いいけど……やっぱり、授業聞いて無かったのか」
    「いや……まあ……ウン……ハイ、そうです……」
     心操ハイ溜息を吐く。
    「いいよ。明日までには返してくれよ」
    「ありがとう心操! 恩に着る!」
     憂無がニコニコとして心操に言う。
    「何か奢ろうか? お礼に」
    「いいって別に」
     そう? と憂無は不思議そうな表情をした。憂無は放課後、心操のノートを借りて書き忘れていた授業の板書を書き切る。その速さ、尋常ではなく。心操が見ている間にノートを写し切ってしまっのだ。
    「……速いな」
    「いやまあ、流石に一日借りてる訳にもいかないしね……」
     と目を逸らす。憂無は心操に再び礼を言って教室から出る。A組目掛けて一直線だ。
    「天哉ー!!」
    「ム、憂無じゃないか」
     と天哉。横には女子とボロボロの男子生徒がいる。
    「今帰るんでしょ? 一緒に帰ろ」
    「ああ! ……と、君にもこの二人の紹介をしておかないとな。こちらの女子生徒は麗日くんだ」
    「はじめまして〜! 私、麗日お茶子! よろしく!」
    「そしてこちらの男子生徒が緑谷くんだ!」
    「はっはじめまして……緑谷出久です……」
     と消え入るような声。憂無は手帳にメモしながら言う。
    「私は前宮憂無。よろしく」
    「前宮ちゃんか! よろしく〜!」
     と麗日。麗日は不思議そうに聞く。
    「なんでメモしとるん?」
    「ああ、これは彼女の癖のようなもので……気にしないでやってくれ」
     と天哉がフォローをした。憂無はあっけらかんと言う。
    「私忘れっぽいからさ。こうしてメモしないと忘れるんだよね……」
    「あっ、そうなんや……」
     うん、と憂無は頷く。
    「『個性』を使うとこうなんだよね」
    「『個性』! なになに?」
     麗日が興味を惹かれたようで聞いてくる。緑谷も興味津々だ。
    「私の『個性』はね……『予知夢』。寝れば未来を予知できる。でもその分古い記憶とか忘れちゃう……とまあこんな感じ、かな」
    「なるほど『予知夢』……! 未来を予知する分アドバンテージは大きいけど、身体強化系の『個性』じゃない分運用が難しい……! どれくらい先の未来を予知するのかでも変わってくる…………」
     緑谷はブツブツと言いながら分析していた。憂無は特に気にしていない。憂無は天哉と緑谷、麗日と並んで帰る。そういや、と憂無は緑谷に話しかける。
    「緑谷はなんでそんなボロボロなの」
    「あっこれは……対人戦闘訓練で……」
    「え、ヒーロー科ってそんなハードなの?」
    「いやっこれは……その……僕の『個性』の加減が難しくて……」
    「そっか」
     憂無はそういう事もあるだろう、と流して歩いたのであった。
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