ひよりがはしる「ハッハッ……ハッ……!」
心臓が破けそうなくらいに苦しい。肺は酸素を取り込むのを諦めたのか、もう息が続かない。生え際から流れる玉のような汗が、ぼくの眉間から鼻の横を通って口に入る。セットする間もなかったけれど、前髪はそれはもう無惨なほどぺしゃんこになって、ぼくの額に張り付いていた。
「あぁ、ほんっと……わるいひよ……り!」
ぼくはもう何度目か分からない口癖を呟いた。否、呟いたつもりだった。まともな言葉は出ていない。多分ハヒューハヒューと壊れた笛みたいな音しか聞き取れないだろう。──だって、さっきから三十分も全速力で走り通しなのだから。
なんでこのぼくが……! こんなこと後にも先にももうないんだからね!
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