主足140字SSお題『これ以上甘やかして、どうするの』
「おはようございます。ご飯出来てますよ」
優しい声に起こされると、可愛い恋人が目の前にいた。
「今日、僕の作る番だったのにごめん……」
「いいんです。透さんのために料理できるの幸せですから」
笑顔で言わないで少しくらい怒ってよ、もう……。
まったく、僕をこれ以上甘やかしてどうするの?
お題『裏切り、ごめん』
はらはらと雪の降り出したあの日。犯人ば誰なのか、仲間と考えていたあの時。俺は嘘を吐いたんだ。みんな、裏切ってごめん。
俺は目の前の脅迫状に火をつける。証拠が灰になって消えていく。
よかった、あなたが笑ってくれて。
これでやっと……足立さんと幸せになることだけを考えて生きていける。
お題『そろそろ気付いてよ』
寒空の下で君はいつも辛そうに笑うね。泣きそうな顔で大丈夫なんて言ってさ。その想いが一方通行だとまだ勘違いしてるの? 僕をかばってることなんて分かってるんだ。嘘が下手な君のことなんてお見通しだよ。
ねぇ、悠くん。そろそろ気付いてよ。僕と君の想いはとっくに通じ合ってるってことにさ。
お題『新手の誘い文句ですか?』
「悠くん、服脱がしてぇ」
酔いの回った透さんに頼まれて、俺はドキリとしてしまった。
「……それ、新手の誘い文句ですか?」
透さんはいつも俺を試す。だからついそう尋ねていた。
「そう思ったならベッドに連れてってよ」
妖しく微笑む透さんを前に、俺には従う以外の選択肢なんてなかった。
お題『なんで怒らないの!』
「なんで怒らないの?」
冷めた料理の前で爆睡した僕を起こさず待っていた悠くんにそう尋ねる。
「起こしたら悪いと思って……」
笑ってごまかすなんて昔の僕みたいだ。
「君が怒っても僕は悠くんを嫌いになんてなれないよ」
驚いた顔しちゃって。同棲してるんだから遠慮なんかしないでほしいのに。
お題『美味しそうに見えた、なんて末期だ』
酔いが回っていると自覚せざるを得ない。こんな図体のデカいガキが美味しそうに見えた、なんて末期だ。
勢いで唇を奪い、舌を絡めれば気持ち良くて蕩けてしまいそうだ。だが酒のせいか体は反応しない。ならば。
「おいで、悠くん」
この子になら美味しく食べられてもいいなんて、もう本当に末期だ。
お題『ただの友達は、こんなこと、しない』
「堂島さんが僕らの関係を怪しんでたから友達だって言っておいたよ」
覆い被さる俺の下で嫣然と微笑み、足立さんは話す。
「君はお友達ってのが大好きでしょ?」
俺があなたの恋人になりたいと知った上で彼は言う。
お互いの体すべてを曝け出す行為した後なのに。ただの友達は、こんなこと、しない。
お題『酷い男』
「君が僕の下に来るなら、この子らの命だけは助けてあげる」
瀕死の仲間を前に俺は頷く以外の選択肢はなかった。
「いい子だね」
きっと俺は足立さんにすべてを見抜かれている。真に助かりたいのは俺なのだと。
大切なものを犠牲にしても足立さんのそばに居たいなんて、俺はどうしようもなく酷い男だ。