さばくのくに 憂鬱の青の住む森は賑やかだ。
採れた果物を籠に入れて運んでいると、遠くの広場に人混みが見えた。その中央にいるのは朗らかで頼りになる性格の森の人気者の明瞭、青の憧れだ。何の取り柄もない青にも分け隔て無く接してくれる。しかし青には自分から駆け寄る勇気も無く、遠目で見ているだけ。
そうして見惚れていると、手元が疎かになり積んだ果物を落としてしまった。明瞭ならこんなドジは踏まない。馬鹿な奴だなと自分を叱りながら手を伸ばすも、足元の小石に体勢を崩し後ろに大きく仰け反る。木の葉の隙間から覗く太陽が顔を照らした。
「ッ、まぶし──────」
そう、青は森に暮らしていた。はずだった。
「曲者だ!囲め囲め!!」
青は訳も分からず疾走する。
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