タケ道　元気にしているだろうか、ウェスタンブーツを脱ぎ捨てながら思う。
　アイドルとしてのレッスンと店の営業も終え帰宅し、靴を脱ぎ捨てた時にふと思いを馳せた。
　
　タケルは主演映画の撮影で師匠と共に地方へと出張をしていて、自分も同じユニットメンバーの漣も─漣は雑誌やファッション誌の撮影が面倒だと先程まで店のカウンターで文句を垂れていた─何だかタケルと会っていなくて物足りなさを感じている。
　長期の撮影とは聞いていたが、タケルや師匠から聞いていた日程より伸びていて、事務の山村さんがスケジュール調整の為に各方々に連絡をしていた姿を思い出す。
　最初は特に物足りなさや、寂しさなんて言うのは感じていなかった。何故かと言えば、出張へ向かった日も次の日も、その次の日も、結構な頻度でタケルはグループLINKや自分個人宛にメッセージを送って来ていたからだ。
　空が綺麗だの、野生の動物だの、師匠や共演の皆さんと食事の風景だったり、初日の格安─予約を忘れていた師匠がやっとの思いで見つけた─ビジネスホテルのガタ付き具合など、色々と送られて来ていた。その写真に添えられているメッセージはすごく短いもので、それもタケルらしく微笑んでしまったが。
　そんなやり取りも撮影が進んでいく中で忙しさが増し、流石のタケルも疲れてしまったのだろうか─師匠からは都度進捗状況などの連絡は入っていたが─頻度は徐々に減っていくと同時に、日々のレッスンは勿論のこと、漣はファッション誌の撮影や容姿を生かしたモデルの撮影、バラエティの大食いコーナーに出ていたり、自分もドラマの撮影や同じくファッション誌のモデルだったり、路線バスで各地を巡るバラエティなど、嬉しい事に忙しく過ごしていた。
　そんな日々もひと通り落ち着きを見せて来た今日、ふと思い出したのである。会いたいな、と。
　別にすっかり忘れていたわけでは無い、撮影中もふと思い出してはLINKを確認したり、『元気してるか？』などメッセージを送っていた。けれど、既読は付くが「ああ」と簡素な返事に満足していたが、流石に寂しさは感じる事が増えていった。
　声が聞きたい、なんて。女々しく思う自分に頭を抱えたのもつい最近の話だ。