僕が任暁左吉に情を抱いているとして、そうさせる原因は一体何に当たるだろうか。
例えば、委員会のせいで四日も寝ていない時。青い隈を目の下にこしらえて、朦朧とした意識から紡ぎ出される言葉は、安藤先生並みの面白くもない親父ギャグである。かわいそうに、左吉の優秀な頭脳は、耳で拾った音の韻を踏むために意図に反して勝手に働いてしまうようなのである。これは、情を抱くには適さない要素だ。
あるいは、そんな左吉が僕にテストで負けた時。言い訳をするでもなく、惜しげもなく悔しそうな顔を見せ、夜遅くまで書物に齧り付く。まるでがむしゃらに生きていた一年生の頃のように、それだけが己の存在価値であるかのように、文字通り必死で、僕に勝つために勉強をする。確かに僕にとっては脅威だが、それゆえに好ましいと言えるのではないだろうか。なにせ僕の嫌いなタイプは阿呆なのだ。
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