閣下はどこへきえた? これも虫の知らせというのだろうか。
別にどうしても今夜中に伝えねばならない用件でもなかった。明日の午前中に予定されている雑誌の対談。その対談相手が急遽変更になった。凪砂のことだ、茨が相手の資料をまとめてさえおけば、現場に向かう車の中ですぐにインプットしてしまうだろう。
それでも何故か今夜、凪砂へ伝えようと思った。いや用件さえも凪砂へ会いに行く口実かもしれない。
二十二時を回っていた。凪砂はまだ起きている時間だろうが、同室人たちのことを思えば部屋を訪ねるには些か気が引ける時間である。
控え目に部屋をノックするとすぐに返事があった。
「はーい!」
柔らかな声と共にドアを開けたのはUNDEADの羽風薫。不穏なユニット名の割に穏やかで面倒みのよい彼には、凪砂も多分に世話になっている。
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