吊られた男②「これは……」
神宮寺寂雷は眉を顰めた。
彼の手には一枚の紙切れがある。何の変哲もない大学ノートの切れ端。シンジュク中央病院のポスト、神宮寺医師宛てに届いたものだというが書かれている内容は紹介状でも患者からの礼状でもなく、あまりに非現実的で目を疑うものだった。
──チームメイトは預かった──
たった一言達筆な字で記された下にはとある住所。更に同封物を目にした寂雷の表情がみるみるうちに険しくなる。それは彼の営業担当であり患者でありチームメイト、観音坂独歩がいつも首に掛けている社員証だったのだ。
突如机上に置いてあった寂雷のスマホがブーッブーッと音を立てビクリと我に返る。緊張を飲み下し、通話ボタンをタップする。
754