孤児と天才と使い魔と ヘキサが拾ってきた小鳥(急な寒さで弱ったのかもしれない
ヘキサとルーにあたためを頼み、シオンは餌を探しに行く。
ルー自身はあまり自然への介入を好ましく思ってはいない(アーサー拾う前?てかアーサー幾つだ)ようだが、必死なヘキサの顔にハンカチを貸してやりつつ、ヘキサの両手ごと包んでやる。
意外そうに見るヘキサ。
小鳥はヘキサに擦り寄る。
暫くして戻ってくるシオンの手に握られているのは薬草にもなる草(この種の鳥はこれを好んで食う。雑食性ではあるけれども、虫や木の実よりは手に入れやすかったし、こちらの方が馴染みがあったため、とはシオンの弁。
ヘキサに渡すと、弱々しいながらも食べてくれて少し顔がほころぶ。
よく知っていたな、とルーに言われて、シオンが孤児院を焼かれて放浪していた頃、喰うものに困ってこの鳥を食ったことがあるからだ、と話す。
薬草と食料、どちらも手に入るから便利で覚えていたと語るシオンを二人が驚きの目で見る。
もちろん、今はそんなことしなくてもよくなったから、もう食べないよと苦笑するシオン。
それにこいつはあまり美味しくも食い出もない。でも鳴き声は一等きれいだから、どうせならそうやって愛でる方がずっといい、とも。
寂しげな顔で笑いながら軽蔑するかい?と訊かれて二人は首を振る。
生きる為なんだからしょーがねーだろ、そんな細かいコトは気にすんなって言うヘキサと、
自分や大切なものを守るために、他を犠牲にすることは良くある話だと、自分の過去を顧みながら語るルー。
ルー自身も自分と家族としての「かたち(本当はこの時点でもう上辺だけのものだってことは薄々わかっていた」を守ろうと、仕事上で色々な人や企業を結果的には踏みにじってきた。やがてそれに耐えきれずに壊れかけていたこころをまもるため、母の死後家を飛び出し、エンフィールドへやってきた。
経緯は違うけども、傷ついたこころを守るために人との付き合い方を変えたルーと、こころもからだも傷ついてエンフィールドへ流れ着いたシオンと、ひとの手を渡り歩いて色々なものを見て来たヘキサと。
ふたりと一匹は、自分を守るための鎧をそれぞれ手に入れてきた。それが今、お互いの鎧と擦れて少しずつ崩れてきている。勿論いい方向に。
小鳥が一声鳴いた。
ヘキサが手に擦り寄る小鳥に戸惑うが、ルーに頭を掻いてやれ(鳥は自ら羽繕いをするが、頭に嘴は届かないので、そこは仲間にやって貰うのだ)と言われ、おそるおそる言われたとおりにしてやると、小鳥が嬉しそうにまた一声鳴く。
小鳥を見つけたヘキサと、餌を持ってきたシオンと、小鳥の扱いを教えたルーと。
過去に何があったかはお互い(今のところは)語らないけども、何処か似ている三人(?)の話。