春の蓋軽やかなさえずりが聞こえたような気がして、敦盛は文机から顔を上げた。部屋の外を見れば,欄干に雀の子が止まり、幼い声を懸命に鳴らしている。それにつられたのか、同じ大きさの雀たちが二羽、三羽と次々集まり賑やかにその声を弾ませている。兄弟なのだろうか、屈託もなく恐れもなくことろころと身を寄せ合う姿は、ほほえましいものがあった。
ひとときの団欒の邪魔をしないよう、敦盛は視線だけをさらに外へ向けた。真冬にはない日差しの柔らかさに目を細める。整えられた庭のあちこちから萌黄の若芽が天へと伸ばし、その先のつぼみも膨らみつつあった。
冬から春へ。
ー戦乱から平穏へ。
終戦から、もう一年が経とうとしていた。
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