二周目は君とカレーを まもなく夏も終わろうかという八月の終わり。
落ち始めた陽と、あちこちで鳴いていた蝉は押し寄せる薄黒い雲とどこかへ消え、夕立が白く降る。激しい音を立て、大粒の雨がコンクリートを叩きつける歩道橋を二つの傘の花がかしげ合い、すれ違っていく。
互いが二、三歩通りすぎたところで紺色の傘がくるりと半回転すると、青年が肩につく程の黒髪を靡かせ顔を覗かせた。振り返ったビニール傘の向こう側には雨に濡れ、妖しく光る白銀の髪。見間違うはずもないーー友達でも、知り合いでもないのに感じるひどく懐かしい面影。青年にはそれが誰なのかが直感でわかった。
「カリム、?」
そう呼び終えたのが先か、振り返った緋色の瞳が青年を射抜いたのが先か。勢いよく投げ捨てられたビニール傘は浅い水溜りに沈み、“カリム“と呼ばれた男は青年の胸に飛び込むと、迷子が親でも見つけたかのように自分より少しだけ広い背を強く抱きしめて言った。
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