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    moemoek51883812

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    モブフロ誘拐モノの序章
    モブは序章ではまだ出てこない

    リドルと喋ってるけど、モブフロ以外のCPは一切なし

    #モブフロ
    mobFloor

    モブフロ誘拐モノの序章太陽がメインストリートの白い石畳を真上から照らし、跳ね返った光が目を焼く。あまりの熱にリドルは眉をしかめた。
    「今年の猛暑はひどいものだね。」
    午前中は曇っていてそれほどでもなかったが、書店で本を選んでいるうちにいつしか強烈な晴れになっていた。
    メインストリートを抜け、吹き出る汗を拭きながら、カレッジへの道を急いでいる時だった。
    「あーー…、金魚ちゃーーーん…」
    太陽と同じ角度で、間延びした声が降ってきた。
    「ゲッ、フロイド!?」
    目を突き刺すような太陽光に顔をしかめながら上を向けば、屋根の上に見知った長身があった。
    「この暑い中、キミのおふざけに付き合うつもりはない。」
    炎天下の中、フロイドに絡まれておいかけっこなんて、考えるだけで熱中症になりそうだった。 絡まれる前に、と踵を返そうとしたが、それより早く、フロイドが屋根の上でぐらりといやな感じに傾き、そのまま頭を下にして落下を始めた、
    「なッ‥」
    落ちる。死ぬ。リドルはとっさにマジカルペンを抜いた。
    「浮け!」
    とっさで全く調整できていない魔力は強すぎて、歩道のタイルに激突する直前だったフロイドが、ぎゅわっと空に舞い上がった。
    「あは、高ぇー。」
    呆れたことに、フロイドはこの状況でヘラヘラしていた。下ろしたら絡まれるんだろうなとうんざりしながら、リドルはなるべくゆっくりとフロイドを地面に下ろしてやった。地面に足がついたかと思うと、フロイドはリドルにもたれ掛かってきた。細身とは言え、30センチも身長が違うのだ。リドルは大きくよろけたが、意地でなんとか踏みとどまった。
    「おいっ!」
    「アハ、金魚ちゃん、冷てー。ひんやり。」
    フロイドに触れられたところは熱く、しかも汗で濡れている。不快だったが、それ以上にその体が熱すぎることが気になった。
    「フロイド、キミ、体温が上がりすぎているんじゃないかい?」
    「えー?わかんね。」
    白い肌が、今はりんごのように真っ赤になっている。リドルを追いかけ回しても息すら乱さない、いつもの憎たらしい余裕ぶりからすると異常だ。
    「どちらが金魚なのかわからない顔色をしているよ。」
    「えー?」
    ぺたりと顔を触るフロイドの動作はいつもより緩慢だ。
    「んー?今日あちーし。そのせいじゃね。」
    フロイドは支えにしていたリドルから体を離した。しかし、ふらふらと揺れると、膝ががっくりと抜けて、べちゃりと灼熱の歩道に尻餅をついた。
    「んぇー。気持ちわりぃ‥。」
    これを見て、先程の転落もフロイドがふざけていたわけではなく、落下したのだと判断した。
    「こんなに暑いのに、あんなところで何をしていたんだい。」
    「パルクールの練習。ガッコーの建物はもう飽きたし。」
    シンプルなTシャツは汗でびっしょり濡れており、雫を垂らしている。
    間違いなく熱中症だ。いけすかない男だったが、さすがに見捨てるわけにはいかない。
    「キミのそれは、熱中症だよ。」
    「ねっちゅーしょー?なにそれ?」
    熱中症を知らないなど、バカをお言いでないよ。と言おうとして、目の前の男が人魚であることを思い出した。
    「ヒトの体は体温調整機能があるけど、その機能を越えた熱を溜め込むとおかしくなってしまうんだ。最悪死に至ることもある。今のキミにはその症状が出ている。」
    「えー、どうやったら治んの?」
    熱された歩道は熱いだろうに、フロイドはべたりと歩道に座り込んだままだ。
    「体を冷やしたり、水分を取ったりするんだ。」
    リドルはさっとマジカルペンを振って、フロイドを立たせてやる。
    「あー、じゃあさ、海につれてってよ。そしたらなおるし。」
    「却下する。速やかに戻り、保険医に見せる。」
    「えー!ガッコーより近いじゃん。」
    「何度も言わせないでくれないか。却下だ。」
    「じゃあオレ人魚に戻るし。水に入らないと死んじゃうよ?」
    「なっ」
    フロイドの顔を見れば、耳が大きく、薄い青いヒレのようなものに変化し始めていた。肌の色も徐々に青みがかってきている。仕組みはよくわからないが、変身薬の効果を任意のタイミングで解除できるらしい。
    「ウギ‥。」
    癇癪を起こしそうになったが、フロイドの調子が本当に悪そうなことを踏まえて、リドルは諦めて海に向かうことにした。フロイドに会ってしまったのが運の尽きだ。

    人通りが少ないとは言え、通りがかる人間は皆リドルたちを振り返った。
    「陸で人魚は珍しいのだから、あまり正体を見せるものではないよ。」
    「なにそれ。オレが人魚なのが悪いってこと?」
    フロイドの声は静かで、リドルは決まりが悪くなった。
    「いや、そうじゃないけど‥。」
    「ならいいじゃぁん。」
    「人魚の涙や内蔵を錬金術の授業でも見たことがあるだろう。あれらは高価なんだ。それを狙って人魚を密漁する業者もいると聞くよ。」
    「悪い奴がいるからって、なんでオレがコソコソかくれなきゃいけないわけぁ?あ、金魚ちゃん。オレのこと心配してくれてんの?」
    「ウギギ‥。」
    ニターっとギザギザの歯を見せて笑うフロイドに、リドルはまたも癇癪を起こしそうになった。


    賢者の島は小さな島だ。二ヶ所の船着き場があり、小さな市街地の表と裏にの位置にある。
    フロイドと会った地点から七分ほど歩くと裏の方の船着き場に出た。
    裏の方の船着き場のすぐそばに、砂浜がある。リドルはフロイドをさの砂浜につれていってやるつもりだった。

    「あは。ありがと、金魚ちゃん。」
    しかし、フロイドは船着き場に着くや否や、どうやったのかリドルの浮遊魔法を振りきり、ドボンと海に飛び込んだ。
    「フロイド!」
    小さいとは言え船を着けるため、足が着くような浅さではない。しかも着衣のままだ。
    熱中症の治療として水風呂に浸けるのは悪くない対処だが、あれでは溺れてしまうだろう。
    「だからフロイドに関わるのは嫌なんだ!」
    悪態をつきながらも、海に沈んだフロイドを引き上げるべく、マジカルペンを振る。しかし、海中のどこにあるかわからない物を引き揚げるのは難しい。
    泳ぎが得意ではないリドルは、自ら海に飛び込んでフロイドを引き揚げるか、助けを呼ぶか迷った。すぐ近くに人通りはない。
    意を決して飛び込むためにリドルが衣服を脱ごうとすると、ぷかりとフロイドのモノと思われるシャツや靴、ズボンが浮かんできた。
    つづいて、パシャン、と水を弾いて現れたのは緑色の細長いものだ。
    「あはー。生き返るぅ。」
    ざばっと水を掻き分けて出てきたのは、人魚姿のフロイドだった。
    「いきなり飛び込むんじゃない!ビックリするだろう!」
    「ごめぇん。海みたら我慢できなくなった。」
    リドルに素直に謝るフロイドは珍しい。
    「助けてくれたお礼に、いいもの見せたげる」
    フロイドが笑い、水魔法を発動すると、フロイドの魔力を帯びて海水が海面から浮かび上がり、命を吹き込まれる。大きなクジラ、シャチ、イルカ、フグ、エイ、小魚の群れ、ヒトデ。
    海の仲間たちの形をした水の塊が陽光を遮りながらきらめいて、リドルの回りをくるくる回る。
    回りながら、小魚の群れが大きなマグロに食われ、マグロは食った分だけおおきくなる。海水のマグロは群れを食いつくしてぷくーっと脹れあがると、沢山のウミガメ、タイ、カニ、サバに分裂した。
    正直見事だった。水を操るだけならそんなに魔力は要らないが、同時にこれだけの数をこの精度で操るにはかなりの技量と集中力がいる。
    リドルは不覚にもフロイドの作り出した水族館にみとれた。
    「アハハハ、金魚ちゃーん!」
    へちゃむくれた小さな魚の形の水球が、ふよふよとリドルの方に空中を泳いでくると、頬にちょん、と触れた。
    「バーン!」
    と思いきや、水でできた金魚は弾けて、リドルはびしょびしょになった。
    「フロイド!キミって奴は!」
    「アハ。涼しくなったでしょ。」
    リドルの憤慨も意に介さず、フロイドは気持ちよさそうに海を泳いだ。リドルの周囲を回るのをやめた海の仲間たちがフロイドの回りに集まる。
    「アハ。」
    長い尾が、海中から鋭く飛び出し、大きなクジラの水球をはたいた。
    するとパシャン とクジラが弾けて、大きなウツボやタコの形にほどけた。
    「みてみてー!ジェイドとアズール!」
    楽しそうに遊ぶフロイドにため息をつきながら、リドルはスマホでジェイドに連絡するのだった。


    ーーーーーーーーーー

    「おっはよー、リドルくん。」
    「やあケイト、おはよう。」
    「昨日さ、フロイドくんと海で遊んでたでしょ。」
    「いや、フロイドが熱中症を起こしていたので、応急処置として海につれていっただけだよ。まったくとんだ一日だったよ。」
    「あはは、大変だったね~。」
    「ケイトも昨日は街にいたのかい?」
    「いや、俺は二人を街で見た訳じゃなくて、コレ!」
    と、ケイトが向けてきたのはスマホ。そこにはマジカメの画面が写っていた。
    「またマジカメかい?フロイドが呟いていたのか?」
    フロイドがマジカメをやるイメージはなかったので、意外だった。
    「良いから見て見て。」
    マジカメアプリ上で動画が再生される。

    動画は賢者の島の街でフロイドがパルクールをするシーンから始まり、リドルに運ばれ、人魚にもどって海で泳ぐまでの一連の流れが、三分半ほどに短くわかりやすく編集されていた。フロイドをメインに写しているが、チラチラとリドルの赤い髪がうつりこんでいる。
    「…これは…。」
    編集は上手く、自然だった。
    『アハハァ。』
    画面の中のフロイドが笑い、水魔法を発動する。
    動画のメインは画像は楽しそうに水でできた海の仲間と泳ぐフロイドだった。半透明のオヒレやセビレが陽光にきらめき、海の仲間の形をした水の塊と戯れる姿は幻想的ですらあった。
    「撮影されていたなんて、気づかなかった。これは、ジェイドかアズールが?」
    「んー。フロイドくんのファン?かな。」
    「なんだいそれは。」
    「このマジカメアカウント、風景とかポートレートのせてるんだけど、二ヶ月前くらいからパルクールしてるフロイドくんの動画も結構上がってて。」
    「この学園の生徒なのかい?」
    「いや、賢者の島の街に住んでる人みたいだよ。」
    「良くできた動画だけど、勝手に人を撮影してネットに投稿するなんて、どうかと思うね。」
    「まあまあ。これ、昨日バズっててさ。なんと二万いいね越え!人魚って珍しいし、映えるよね!リドルくんってフロイドくんと仲良いでしょ?人魚姿で写真を撮らせてって頼んでみてよ! 」
    「馬鹿をお言いでないよ!ボクとフロイドの仲がいいだって?キミの目はひどい節穴だね。」
    真っ赤になって憤慨するリドルを、横で聞いていたトレイがまあまあと宥める。
    よくあるハーツラビュルの一幕だった。

    フロイドが突如姿を消したのは、それから三週間後のことだった。
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    nico

    INFOジェイフロ小説アンソロのサンプルです。NRC時代の冒頭部分と、25歳になってからの彼ら部分を少々追加しました。冒頭しんみりめいてますが、しんみりしてるのは最初だけで内容はラブコメだと思ってます。ハッピーハッピーハッピーエンドなジェイフロです。
    余談ですがあまりの文字数の多さに主催のしののさんに泣き付きました……!
    ふゆのおわりにうたう唄 息が白い。
     海の中では見られない現象を面白く思いながら、オレは出来たばかりの魔法薬を雲がかかる空にかざした。虹色に輝く半透明の液体が、ガラス瓶の中で揺らいでいる。なにとはなしに左右に振れば、それは美しく光りながらたぽたぽと瓶の中でたゆたった。
    「キラキラじゃん」
     まるで他人事のようなつぶやきが白く変わって空気に溶ける。外廊下に隣接している学園の裏庭。流れる吐息に誘われて目を向ければ、そこは一面真っ白な新雪に覆われていた。
     寒さのせいか、庭に人の気配は全くない。まっすぐ歩いていた外廊下から、裏庭へと向きを変える。芝生の上に落ちた雪が、平らな革靴の底で圧縮される感覚があった。もう少し積もったら、滑って転んでしまいそうだ。そんなことを考えながら、オレはうっすらと雪がかぶったスチールのベンチを、ゴム手袋をしたままの手でぞんざいに払った。脚を伸ばして腰かけて、灰色の空を大きく仰ぐ。
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