少年ナイフ別に徹郎が他のやつと話してても僕は気にしない。それでいいんだ、そっちの方がお似合いだ。徹郎の周りの連中はいいやつばっかりだから、それでいいんだ。
徹郎は孤独なやつだと勝手に思っていた。いつも僕と一緒にいる、だから僕以外の友達はいないのだと勝手に勘違いしていた。
僕には友達と心の底から思えるやつはいない、徹郎以外。大手を振って友達だと言い張れるやつなんていなかった。勿論表面的に付き合っているやつはたくさんいる。でも僕の事をきちんと見つめているやつはきっといない。徹郎もきっとそういうやつなのだと僕は思い込んでいた。
でも今日気づいた。徹郎は誰にでも優しいんだ。僕以外の人と話している時の徹郎を見ていて思った。
表情、挙動、声のトーン。
全部僕と話している時と同じだった。徹郎は誰にでも同じ態度をとるんだ。僕は少しだけ悲しかった。
その後徹郎を捕まえて少しだけ話した。徹郎は相変わらず同じだった。徹郎は徹郎だ。僕が干渉して変えることはできない存在なんだ。自分の思い通りになってほしいなんてとんでもないわがままを抱えている僕は卑しい。
僕の持ってるナイフを徹郎に渡して「僕の胸を刺せ」と言った。徹郎は困ったように笑ってはぐらかした。きっと徹郎は誰の事も傷つけない。せめて一刺ししてくれたら、僕の鬱蒼とした気持ちも身体から落ちる赤と共に晴れただろう。
徹郎はいいやつだなと思った。