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    カエルけろけろ

    無断転載禁止。文置き場。男子高校生譲テツパラレルのみ。

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    カエルけろけろ

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    DKパラレル譲テツ短文。適当。

    #譲テツ

    紙飛行機明日が来てしまう前に紙飛行機を死んだような夜の空に向けて投げた。風の音と共に闇の中に吸い込まれていく。

    医学部に進学した兄さんのテストの点数はいつも三桁だった。俺はいつもあと少しで三桁に届きそうな点数で頭を打っている。周囲からするとそれでもすごい事らしい。親も兄さんと比べずに褒めてくれる。その優しさが時折後ろめたく感じる。

    全ては順調だ。先生も国立、私立問わず医学部は堅いと言っていた。俺はこのまま医学部に進学する。全て上手くいくんだ。数点の差なんて医学部に行ってしまえば関係ない。それでいいんだ。きっと、大丈夫だ。

    途中式は完璧だったけれど最後の最後で間違えて減点された数学の答案用紙を見つめていた。完璧じゃないと意味が無いんだ。人の身体を開く人間に失敗は許されない。

    本当に上手くいくのか、本当に。


    「そんなもの投げちゃえよ」


    譲介が言った。

    俺の手からシワのついた答案用紙を取り上げた。譲介はそれに新しく折り目をつけて器用に紙飛行機を作ってしまった。少しよれている。昔施設にいた人から教わったんだと言っていた。よく飛ぶ折り方らしい。

    「これが落ちなかったら上手くいくよ、全部」

    投げるのは君だと言わんばかりに答案用紙で作った紙飛行機を手渡された。

    譲介は時折意味のわからない事をする。俺の中には無い発想で動く事がある。

    「僕には逆立ちしたってそんな点数取れないよ」

    遠くを見つめた譲介が言う。

    そうだな、そうだ。それでいい。

    追い風が吹いた瞬間、紙飛行機を手放した。風に乗った紙飛行機は段々と遠くへ行ってしまった。俺たちは夜の静寂に吸い込まれていくそれを見ていた。

    どうか紙飛行機が落ちませんように。明日に届きますように。俺は夜の河川敷で、譲介の横で、ずっとそんな事を一人で願っていた。
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    SakuraK_0414

    DONE譲テツのなんかポエミーな話です。
    譲テツと芸術と27階時代からアメリカ寛解同居ラブラブ時空の話になりました。
    最初のジャズは You’d Be Nice to Come Home Toです。裸婦画はルネサンス期の任意の裸婦画、文学は遠藤周作「海と毒薬」のイメージです。引き取ったなりの責任として旅行とか連れて行ってたテツセンセの話です。
    ムーサ、あるいは裸のマハ。副題:神の不在と実在について。ムーサ:音楽、韻律の女神。ブルーノート東京にて。

     いつだったかの夏。
     学校から帰ってくるなり来週の診察は譲介、お前も付いて来い、と言われた。家を出るのは夕方からだと聞かされてちょっと安心したものの熱帯夜の続く8月の上旬のこと、内心うんざりしたが拒否権は無かった。この間の期末テストで学年1位だったご褒美だ、と言われたからだ。
     成績トップのご褒美が患者の診察についていく権利って何だよ、と思いはしたがこのドクターTETSUという様々な武勇伝を引っ提げた色々とんでもない身元引受人が医学を教えるという約束を反故にしないでいてくれたのが嬉しかったのもある。
     当日の夕方の移動中ドクターTETSUは僕に患者の状態などを説明してくれたが、内心落ち着かず、どこに連れていかれるのか気になって話はあまり聞けていなかった。これを着ていけ、と上から下まで真新しい服一式を渡されたからだ。サックスブルーと白のボーダーシャツにネイビーの麻のサマージャケットをメインに、靴は通学に使うのとは違うウィングチップの革靴まで差し出されたのだ。普段は政界・財界に影響力を持つ患者の対応をいつもの制服で対応させるこの人がこんな服を持ってくるなんてよっぽどの患者なのか、と身構えてしまった。多分それは横にいる大人にはバレていたのだけれど、彼は指摘して叱るようなことはしなかった。
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