離した先にあるものは いつかこの手を離す日が来ると、レイン・エイムズには分かっていた。
彼は幼い頃から誰よりも優秀だった。生まれつきの二本線によく回る頭脳、固有魔法も戦闘向きとくれば、周りは間違いなく神覚者になれるだろうと褒めそやしたものだ。困ったことがあれば言いなさい、などと近所の人々はよく言ってくれたものだったし、両親も期待をかけてレインを可愛がってくれていた。
しかしその両親が亡くなると、周りは手のひらを返した。保護者がいない子どもというものは、周囲からすると視界にも入れたくないものらしい。あれだけ親切だった人々は、急にレインが透明人間にでもなったかのように振る舞った。
その時にレインは悟った。みな口では良いことを言うが、それは本当にただ言ってみただけだったのだと。行動で示してくれた者なぞ遂に現れなかった。
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