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    Rahen_0323

    @Rahen_0323

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    Rahen_0323

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    カキツバタが居なくなる話三話目です。相変わらずギャグ要素ゼロ。
    ここから読むとなにも分からないと思うので「アレは死んだ(一話目)」と「SOS?(二話目)」から読むことをお勧めします。

    堪えた悲鳴ここに居るのは六人。私達は一先ず二手に分かれて行動することを決めた。
    私とゼイユさんとネリネ先輩。ハルトさんとスグリくんとアカマツくん。丁度男女で役割を決めて、早々に動き出す。
    ハルトさん達はカキツバタの実家に改めて話を聞きに。私達は先生に協力をお願いして、彼の行動や帰省の意図を探ることにした。
    「ここがカキツバタくんの部屋です」
    男子寮にある正真正銘男子の部屋。その前で、生徒の部屋の鍵を管理している警備員さんと先生は立ち止まり、告げてきた。
    カキツバタの自室なんて、来るのは当然初めてだ。他の二人もそうだろう。
    でも、『男の子の部屋だから』という抵抗はあまり無かった。カキツバタだし、ここまでさせてくれた原因は彼だ。とうに腹は括ってる。
    「本来ならなるべく早くご家族に荷物を送るべきなんでしょうけど……訃報の一件で、あの家への不信感が広がっているもので。この部屋は手付かずになっています」
    …………どうせあの家からの催促も無いんだ。だから一層先生達は片付けられていない。
    私は父親と同じジムリーダーをしているからと、あのシャガさんにもそこそこ信頼を寄せていた。でも流石に皆と同様怪しさを感じていて。
    「しかしその、大丈夫ですか?プライバシー云々はさて置くとして………」
    「入ってもキミ達が辛いだけでは」
    「いいんです。大丈夫ですから開けてください」
    「ネリネ達は覚悟を決めています」
    「心配なんて結構よ」
    流石に手紙のこととかは話してない……というか、あまり大人を信じられる心情じゃなかったので話せなかったけど。
    とにかく開けて欲しいと伝えると、彼らは頷いた。
    「分かりました」
    鍵が差し込まれ解錠され、扉が開く。
    私達三人は「終わったら戸締りをして返しに来てください」とスペアキーを渡されてから、ズカズカ無遠慮に侵入した。
    薄暗い室内をよく観察する為、電気を点ける。
    「…………なにも無いわね」
    ゼイユさんが零す。
    いや、なにも無いことは無い。ポケモンフーズだったりその器だったり、若干汚れたキッチンやベッドだったり……生活感は多少ある。
    しかし、思ったような部屋ではなかった。さぞ汚れて荒れた酷い空間なのだろうと思ってたのに、存外ゴミは全然落ちていないし、服が散らばってるワケでもなければ机も片付いている。埃もこの四日間で積もっただけだろう程度。
    「ネリネは驚愕しています」
    「私もです……思ったよりも普通、っていうか」
    「なんか、ついこの間まで人が暮らしてたのが信じられないわ」
    自分になにかが起こるから綺麗にした……という感じでもない。半端に残っている物が幾つかあるから。
    しかし何度見直してもカキツバタらしくない部屋だ。
    思えば育ちは良い方だろうから、プライベートでは案外キッチリしてるのかな?いやいつもちゃんとして欲しいけど。

    して……欲しかった………けど…………

    机上にある、彼がよく食べていたお菓子の箱。それを見て涙が込み上げてきた。あのくだらない会話ばかりしていた平穏な日々は、カキツバタと一緒に消えたのだと突きつけられた気がして。
    でも、唇を噛んでなんとか堪える。
    「貴方は生きてる。誰が諦めても、私達はそう信じますよ、カキツバタ」
    一度は信じた絶望。
    今は最早疑いになり、嘘であるという思い込みに近い状態だった。
    「タロの仰る通り」
    「よし!!このムカつく裏の部屋を隅々まで荒らして、あのバカの情報掴むわよ!!」
    「はい!!」
    私達は意気込んで、カキツバタの部屋の調査を開始した。
    ゼイユさんは男兄弟持ち故か躊躇無くクローゼットを開け、ネリネ先輩はキッチンへ向かい。私は机周辺を調べ始めた。
    「うーん、普通に制服とかがあるだけねえ。ていうかアイツの私服にしてはセンスあるわね」
    「冷蔵庫の中は殆ど空です。食事を疎かにしているのは知っていましたが……不健康極まりない。ネリネは呆れています」
    「机は……あれ、これポケモン育成の専門書?付箋も貼ってあるし、こういうのちゃんと読むんだ……意外……」
    各々ちょっと的外れな状況報告をする。あまりにも関係無い物ばかりだから仕方ない。
    「タロ、本になにか挟まってるとかは?」
    「確認してみます」
    それでもとにかく徹底的に動いた。ポケモンに手紙なんかを預けたあのカキツバタだ、何処になにを隠してるか分からない。些細な情報でも見逃さないようにしないと!
    先輩達も、小さな隙間から収納からなにから、隈無く探索をする。
    「うーーーん…………なにも見つからないわね」
    「こちらも同じく」
    「えーっと、私の方は」
    ここでは手掛かり無しかもしれない。

    そう思いかけたところで、ふと机の収納にあったクシャクシャの書類を発見した。

    「タロ?なにか見つけた?」
    シワが出来過ぎて読みづらい。手に取って広げて確認してみた。

    「………………『休学届け』…………」

    「えっ!?」
    「そのような物が?よく見せてください」
    口にして読むと、二人が慌てて駆け寄ってきた。
    覗き込んできた先輩達はギョッとする。
    「これ、カキツバタの字よね?」
    「何故このような物が……」
    「もしかして、元々はただの帰省じゃなくて休学のつもりで……?ここにあるってことは提出はしなかったようですが」
    ……やっぱり、『暫く帰れなくなる程のなにかが自分に起きる』と確信してたんだ、彼は。
    「あ、休学の理由も書いてある」
    「『家の都合』、と記されていますね」
    とうに決定的だったが最早考えるまでもなかった。全ての原因は、絶対に彼の実家にある。
    「…………なんで、カキツバタは分かってて帰省したんでしょう。いつもみたいに逃げるなりなんなりすれば良かったのに。……話してくれれば、助けたのに」
    「……同意します。いつも彼は隠し事ばかり。ネリネ達は……信頼されていなかったのでしょうか」
    「どうかしら。あたし達に限った話じゃない気もするわ。先生達にもハルトにも、誰にもなんにも言わないんだから、あのすっとこどっこい」

    いっつもふざけた笑顔で、人に甘えてダラダラしてばかりで。

    そのクセ肝心な時には頼らないで、一人で勝手に動き回る。

    どんな気持ちでこの届出を出そうとして、やはり止めようと仕舞ったのか。

    どんな感情で、私達一人一人への手紙まで残して手持ちに預けたのか。

    それすら分からせてくれないのが、何処までも腹立たしい。

    「思ったんだけど。休学届け提出する手前まで来てたってことは、シアノ校長がなにか聞いてるかもしれないんじゃない?」
    「確かに。この部屋にはもう他になにも無さそうですから、ダメ元で話を伺ってみましょう」
    ふとゼイユさんが言い出して、私とネリネ先輩は賛同した。
    他の先生達はああだったけど、校長ならなにか知ってるかも。早速校長室に行ってみようと私達は立ち上がった。

    私は眠っていた休学届けを元の場所に戻そうとして……その紙が折れて覗いている裏面に、なにかが書いてあることに気付いた。

    「?」
    もしや隠しメッセージでも、とドキドキしながら念の為確認する。



    『行きたくない』

    『誰か』



    「…………っ!!」

    淡々とした字は途中で途切れていた。

    でも、明確に感じ取れてしまった。彼の悲鳴を。恐怖を。誰にも手を伸ばせずとも、助けを求めていたのだと。



    『これさ。「SOS」とも取れるんじゃないかな?』



    「タロー?早く行くわよー」
    「あ、は、はいっ!」

    その言葉を直接言ってくれれば良かったのに。なにが『探すな』よ、バカ……!!

    私は書類を元あった場所に返して、先輩達を追った。

    それなりに強いつもりで居たのに、随分涙脆くなっちゃったなあ、と苦笑いしながら。















    「失礼します」
    私達三人は校長室の扉を叩き、しかし返事も待たずに勝手にお邪魔した。
    「あれー?タロちゃんにゼイユちゃんに、ネリネちゃんまで。どうしたの?てっきりまだ落ち込んでるものかと」
    流石のシアノ校長先生でも心配はしていたようで、目が見開かれた。まああのカキツバタの訃報が届いて、リーグ部は酷い有様だったのは事実だ。こんな人でも大人だから、事態は重く受け止めて当然だろう。
    でも
    「それどころじゃなくなったので」
    無駄話をしてる場合じゃない。今は訊くべきことだけを。聞きたい話だけを。
    ズンズン彼の目の前まで行って、座っている学園の長を見下ろした。
    「単刀直入に訊きます。カキツバタについてなにか知ってることはありませんか?」
    シアノ先生は、「うーん?」と帽子の鍔をいじる。
    「知ってることって言われてもねえ。個人情報はあんまり、」
    「そうじゃなくて」
    「アイツが帰省した理由とか帰る前になにか言ってなかったかとか、そういうのよ!」
    「ネリネ達は、彼が居なくなる直前に貴方と会話した可能性を感じています。なにも無かったならそれでも構わないので、どうか正直にお答えください」
    意味を伝えたら、益々不思議そうにされる。
    もう死んでしまった人間のことを探るなんて、不自然だとも私達らしくないとも分かってる。けれど、真実を求める訳を話す余裕は無い。
    「教えてください。カキツバタは貴方に会いに来ましたか?」
    私達は、自分で言うのもなんだけど優等生だ。
    なにか大きな意味があると悟ってくれたようで、校長は静かに頷いた。
    「うん、会って話したよー」
    「どんな話をしましたか?」
    「うーん……詳細にはどうにも、だけど」
    それからデスクを探り、一枚の書類を取り出した。
    「これを受理してくれないか、って持って来てね。今思えばその瞬間に引き留めないとダメだったのかも」
    見せられたのは、汚れも皺も一つも無い、ただ淡々とした文字が認められた、

    退学届け、だった。

    私の喉からヒュッと音が鳴りネリネ先輩が目を丸くして、ゼイユさんがデスクを叩く。
    「カキツバタが。これを?直接?」
    「うん」
    「受理、したのですか?」
    ネリネ先輩が震える声で質問を飛ばして、校長は首を横に振る。
    「……その場で『受け取れない』って言ったよ。『せめて四天王とリーグ部長業務の引き継ぎくらいして』とも。彼は三留してるし、自主退学の理由として十分過ぎたけど……流石にねえ。でも、聞く耳持たないで置いていかれちゃったんだ」
    「「「…………………………」」」
    退学。退学だって?休学よりも重いじゃないか。
    卒業したいって言ったその口で、どうしてこんな物。そんなにも大きな覚悟を決めてたの?誰にもなにも言わずに、たった一人で?

    ……うそつき。

    「流石の僕も、こんなことになっちゃって後悔してるんだよねー。どっちみち彼が頼れる人間なんてこの学園の何処にも居なかったみたいだし、声を掛けたところで同じだっただろうけど」
    「…………なにを話したか、詳しく憶えてますか?」
    「んー、口頭で伝えてもいいけど……ちょーっと自信無いから、はいコレ」
    どうにか掘り下げようとしたら、シアノ校長は一つのDVDを渡してきた。
    ケースに『監視カメラ映像』と書いてある。

    「事故とかじゃないんでしょ、彼が消えた原因」

    「「「!!」」」
    「色々とタイミングが良過ぎるからすこーし怪しんでてね。キミ達が調べ回ってるのが分かった時点で確信したよ。僕もそこまで鈍くはないからねー」
    だから、と続く。
    「本当は良くないけど、それあげちゃう。確認の為に用意したやつ。この部屋の監視カメラの映像が音付きで保存されてるから」
    「カキツバタと貴方の会話が刻まれていると?このDVDに?」
    「そういうこと」
    確かにこっちの方が確実だ。この校長はカキツバタ並みに言動への信憑性が薄い。
    私達は有難く頂戴することにした。
    「ありがとうございます」
    「外部に漏らさないよう取り扱いには気を付けます」
    「で、他にもなにか隠してることとか無いわよね?」
    「うーん、無いと思うけど。どうだったかな」
    「はぁーっ………………」
    ここで得られる物は全て得たようだ。
    確信を持った私達は踵を返した。
    「それでは失礼します」
    「急に押し掛けてごめんなさい」
    「なんか思い出したら言いなさいよ!絶対!」
    「分かった。まあその気になったらそっちも僕に話してねー」
    「ではその気になったら」
    お辞儀をして挨拶して、足早に去っていった。
    一つの薄い円盤を片手に。……これでもっと深い部分が判明するといいんだけど………
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    Rahen_0323

    MAIKINGカキツバタが居なくなる話六話目です。完全シリアス。捏造過多でなんでも許せる方向け。
    シリーズなので「アレは死んだ(一話)」「SOS?(二話)」「堪えた悲鳴(三話)」「円盤(四話)」「王者(五話)」から読むことをオススメします。
    気付いたらこのシリーズ一ヶ月止まってたらしいです。申し訳ねえ。色々間違ってないか不安になりながら投稿してるので後から修正入る可能性があります。
    愛と後悔「先ず、一番重要な点から伺います。……カキツバタくんは、死んだんですか?」
    僕が念の為覚悟を胸に静かに問うと、スグリが怖い顔になり、アカマツくんがギュッとフライパンを握り締めた。
    アイリスさんはそんな僕達を順に見て、言葉を選ぶように暫し沈黙して考え込む。
    数分にも数時間にも感じた静寂が過ぎ去った後、飛んだ答えはこれまた不可解だった。

    「私も、死んだのだと聞かされました。でも生きてると思う」

    僕達三人は視線を交わらせる。
    そんなアイコンタクトには気付いているのだろう。イッシュの女王は大きく息を吐き出して続けた。
    「ご存知か分からないけど、私はソウリュウシティの出身でもドラゴン使いの一族の生まれでもないの。竜の里という場所から来た、所謂"余所者"。お祖父ちゃんの後継者だからって、そこは変わらない。だから……一族の仕来りにはまだあまり詳しくなくて。関わることが無かったわけじゃないけど、仲間外れにされることも多いの。あくまで"後継者"で本当に当主になる日も決まってないから、尚更」
    3010

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