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    Rahen_0323

    @Rahen_0323

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    Rahen_0323

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    ヒスイ帰りカキツバタその4です。ポケモンとの再会パート。
    シリーズ物なので「置き去った男」の1〜3を先に読むことをオススメします。
    なんでも許せる方向けです。細かいことは気にしないで読んでください。
    普通にゲットしたとかタマゴから孵ったとかなら全然仲良くなれそうだけどなあ……と思いながら書いてた。皆幸せになって欲しい気持ちはある。

    置き去った男 4カキツバタが帰って来てそのまま入院した日から一週間が経った。
    あれからねーちゃん達も加わって、彼の体調も気にしながら七年分の積もり積もった話を毎日のように沢山した。俺達の仕事の話からリーグ部の皆が今どうしてるか、バトルについてやシンプルな世間の情勢まで。
    カキツバタは特に辛そうでもなく、むしろ俺達が元気にやってたことに安心した様子で相槌を打っていた。正直元気じゃない日もいっぱいあったし、リーグ部も彼の失踪で色々起きてたんだが。その心に燻ってる希死念慮が強まりでもしたら大変なので、暗い部分はあまり語らなかった。
    「カキツバタはどうしてたの?ヒスイでのこととか、話せる部分だけでも話して欲しいべ」
    安定した頃を見計らって聴取も受け、過去や未来であったことをオモダカさん達に少し口にしたらしいけど。やはりというか、俺達にもリーグや警察にも全てを打ち明けるのは難しいみたいで、詳細はバトルやポケモンの話くらいしか引き出せなかった。
    まあ無理に訊いても仕方ない、検証も出来ないのだから、と四天王達に止められて、そのうち俺達も尋ねるのを止めた。きっと幾つも辛い経験をしたのだろうから、嫌がっているなら思い出させるべきじゃない。そう慰めるような表情で首を振られてもなお我を通し続けるほど、俺達は馬鹿ではなかった。

    「しかしカキツバタ。ハッサク殿から私物を返されたが、マントもジャージも酷い有様だな……」
    「へへ、まだ着られるだろってつい使い込んじまったわ」

    一方シャガさんは返却された服の状態を見て凄い顔をしていた。うん、分かる、ズタボロ過ぎてビビりますよね。数少ない現代から過去へ持ち込めた物とはいえ、こんな風になっても着用し続けて走っていたのはどうにも……カキツバタに思い出を肯定してもらえたようで悪い気はしなかった。
    それはそうともう使えないだろ、新品を用意してやる、とシャガさんと一緒に捨てようとしたら、酷く悲しそうな顔をされたので処分は見送った。情緒の無いことをしようとしたかも。流石に反省した。

    一週間に何人ものお見舞いが来た。オレンジアカデミーとブルーベリー学園の教員達に、四天王に、ジムリーダーに、学園の卒業生、イッシュチャンピオンまで。皆カキツバタが無事(と言えるかはアレだけど)戻って来たことに喜んでくれた。
    ……アカデミーの中では歴史科のレホールさんだけが来なくて、「食い付きそうなのになんでかな?」とハルトが首を捻ったらオモダカさんが「彼女は出禁です」と怖い顔で笑っていた。面識の無いシャガさんと学園で会った時の記憶が薄れているらしいカキツバタは「一度も来てないのに???」とハテナを浮かべまくっていたが、俺達は察した。流石はトップ、賢明な判断である。

    でもって、ねーちゃん達パルデア外で過ごす仲間も次第に引き揚げて、今日。やっとカキツバタが病室の外に出る許可が下りた。
    怪我が思いの外重く、それだけでなくタイムスリップをしたので身体に異変が起きないか経過の観察も必要だった為、時間が掛かってしまったが。漸く外出が許されたと本人は大はしゃぎで。
    「じーちゃん早く〜!なあ、急げって!」
    「はいはい、急かさない」
    七年前の態度が何処へやら、今日までカキツバタは我儘をあまり言わなかった。しかしポケモン達に会いたくて会いたくて仕方なかったようで、車椅子を看護師さんから受け取って説明を受けるシャガさんを急かしまくってた。ベッドを大袈裟に叩く姿が幼い。タロ先輩が居たら五月蠅かったかも。彼女は「大人になって見ると子供のカキツバタって可愛いかも……」などと評価していたので。……あの人の『可愛い』の基準は相変わらず不可解だべ。
    「じーちゃーん!」
    「はいはい」
    とはいえ看護師さんもハルトもハッサクさんも微笑ましそうにニコニコしていた。シャガさんさえ「じーちゃん」を連呼されているからかご機嫌だ。
    カキツバタのことすっかり子供扱いだけど、まあ実際子供だし皆がいいならいっか、と俺も笑って見守る。
    そのうち準備が終わって、カキツバタは待ってましたとばかりに祖父へと手を広げる。抱き上げて車椅子に乗せなければいけないのは当たり前だが、恥じらいもなにも無くてシャガさんは顔を覆っていた。孫の為に市長とジムリーダーを辞したことといい、一週間前からまるでイッシュに帰る様子が無いことといい……この人中々の祖父馬鹿だよな。
    「じーちゃん?早くしろって」
    「すまない……余りの可愛さに動揺してしまった」
    「???? なんでもいいけど早くしろぃ!ブリジュラス達だけじゃなくてウォーグル達も待ってんの!」
    「ああ、すまない。では行こうか」
    あのスパルタンメイヤーなので万が一は無いと思うが、いつでもフォロー出来るよう構える。
    当然の如く余計な心配だったようで、細い身体は軽々と車椅子に移動させられた。まあまあのお年だろうにわや凄えしカッコいい。
    「よっしゃ、行こうぜーい」
    「分かったから暴れない」
    カキツバタの移動はシャガさんに任せて、俺達三人はモンスターボール運搬係になった。六個くらいなら全然一人二人でも持てるが、カキツバタはヒスイから持ち帰った手持ちがあと六匹居るので、つまりそういうことだ。
    リーグに預けてあったものの事前に渡されていた十二個のボールを手に、敷地内の庭へと出る。
    「えーっと、先ずブリジュラス達からかな」
    「早速出しますですよ」
    「頼むわー。まだ腕振り回すなって言われてっから」
    一応人払いはしてもらっていたから、遠慮無くカキツバタの元の手持ち、フライゴン、カイリュー、ジュカイン、キングドラ、オノノクス、ブリジュラスを繰り出した。
    途端、六匹全員が叫びながらカキツバタへ突進した。
    「うわーーっ!!カキツバターーっ!!!」
    「シャガさーーーん!!!!」
    余りの勢いに俺とハッサクさんが悲鳴を上げるも、ハルトのコライドンがギリギリでカキツバタを逃した。傍らに居たシャガさんもそのフィジカルを活かして避けていた。
    「へっへー!久しぶりぃ!元気そうでなによりだぜ!」
    「この七年間恐ろしいくらい大人しかったというのに。余程カキツバタが恋しかったようだね」
    「冷静!!」
    「ドラゴン使いの一族のメンタル凄……」
    「シャガさんはともかく!カキツバタくん、怪我は!?」
    「へーきへーき。ほれほれ、一気には無理だが一匹ずつおいで。ゆっくり再会を喜ぼうなあ」
    車椅子ごと持ち上げられた主人に、ポケモン達は申し訳なさそうにしながらおずおず擦り寄る。
    「七年も放ったらかしにしてごめんなあ。元気だったか?ん?オイラ?オイラは見ての通り元気よ!」
    「いや説得力無いぞ」
    「よーしよしよーし。お?ブリジュラスのクリーナー変わった?」
    「分かるのか。預かったばかりの頃はきみの部屋にあった物と同じ製品を使っていたのだが、二年ほど前に販売中止になってしまってな。今は別の物で磨いている」
    「あれま。ブリジュラス、アレ気に入ってたのになー。でも今のはがねボディもイカしてるぜぃ!」
    カキツバタは満面の笑みで、ブリジュラス達もメロメロを食らったように甘えてた。
    感動的な光景にハッサクさんが肩を揺らしてしゃくり上げてる。この人本当に直ぐ泣くよな。大声を出さない理性はあるっぽいけど。俺はむしろ涙が引っ込んでしまった。
    「そうそう、ウォーグル達とも挨拶せにゃなあ!ハルト!」
    「はーい。えーっと、全部投げていいの?」
    「あー、赤いボールとそっちの二つのボールは一旦置いといてくれぃ。残りの三個だけ頼むわ」
    「えっなんで?」
    暫く六匹を構ってから切り替えたカキツバタは、けれどなんだか不思議なことを言い出す。
    なんで三匹だけ?全員と対面した方がいいんじゃねえの?
    「いやーそれがよ。ヒスイでは三匹しか使ってなくて、持って帰った後の三匹は、あー、うー、前言ってた一緒にヒスイ出たヤツから預かったポケモンで」
    「返す約束したってことですか?」
    「そうじゃなくて。『必要だろうから』って渡されたんだ。一応言うことは聞いてくれるんだが、オイラとあの二人以外には警戒心マックスだからよ……暴れ出さないとも限らねえっつうか。でもこんな身体じゃ止めらんねえし」
    「『必要』…………もしかして、時空とかタイムマシンとかに関わる、」
    「……………………………」
    「いや、言いたくないならいいべ。分かったよ」
    なんとなく時空に関わる特別なポケモンと察しつつ、俺達は従うことにした。正体がなんであれ、危険性があるのも事実なのだろう。ならトレーナーの意見を無視して危険な橋を渡る理由は無い。
    ハルトは指定された三個の旧式ボールだけを持ち、中に入っていたポケモン達を繰り出した。

    登場したのは、カキツバタがエリアゼロから出る際に使っていた変わったウォーグルに、これまたなんだか姿が違うヌメルゴン、打って変わって現代でもよく見るガブリアスだった。

    「おーっ!ウォーグルにヌメルゴンに、ガブリアスですか!」
    「ヒスイにはドラゴンポケモンが少なくてなあ。伝説以外ではガブリアスとヌメルゴンとコイツらの進化前くらいしか居なかったんだ。ウォーグルに関しちゃ移動にも便利だったし懐かれちまったんで、この三匹でやっていってた」
    三匹はキョロキョロ俺達を警戒するも、間も無くカキツバタの姿を見つけて雰囲気を緩める。
    くっつくヒスイでの仲間を、カキツバタは笑顔のまま「お前らも一週間振りだねぃ」なんて撫でていた。
    「ほら、皆。挨拶挨拶ー。ヒスイの皆、こっちは現代でのオイラの仲間だ。ブリジュラス達も。居なくなってた間はコイツらに世話になっててな。仲良くしてくれーい」
    六匹と三匹はパチリと目を合わせ、真正面から対峙する。
    「…………………………」
    「…………………………」
    「「「…………………………」」」
    なんだか嫌な沈黙というか、居心地悪い空気を感じて、「あれ、これ大丈夫か?」と見守っていると。
    ガブリアスがまるで『どうも、ずっとご主人を守っていた相棒です』と言わんばかりにブリジュラスを見下ろし挑発的に笑った。
    「「「あ」」」
    これはマズい。
    しかし止める暇も無く、ブリジュラスは激怒して大声で鳴き他の七匹もバチバチ睨み合い始めた。
    「ちょ、え!?ちょいちょい、喧嘩すんなってえ!仲良く!仲良くしてくれぃ!」
    取っ組み合いまで始まるそれに、俺とシャガさんが頭を抱えた。
    「ばっ、キングドラ雨降らすな!!ブリジュラスはビーム構えるな!!こらウォーグル!!お前も応じるなって!!ガブリアスも煽るな!!」
    「カキツバタくんの育て方が云々、というより、」
    「むしろたらし込み過ぎたんでしょうね」
    「いや感心してる場合じゃねえって!!早く戻さないとバトル勃発しちまう!!」
    「キミ達戻りなさい!!」
    揉めに揉めて大喧嘩になって、これは放っておいても落ち着かないことを察したので俺とシャガさんでヒスイ組をボールに入れた。
    未だ怒りが収まらないらしいブリジュラス達がブチギレる。
    「よ、よしよし、落ち着けぃ。事情がどうあれ浮気してごめんな。ツバっさんは今でもちゃーんと皆大好きだから。な?」
    ……彼らは七年もの間カキツバタを待っていたんだし、それにそのカキツバタが自分達の知らないところで傷だらけになっていて、おまけに大変な中で彼の助けになったのはまるで知らないポケモン達だったんだ。故に、拒絶というより嫉妬とか悔しさとかが爆発してしまったのかもしれない。
    ガブリアス達からしても、ブリジュラス達は突然現れた見ず知らずのポケモン。突然「仲間だ」と紹介されても、カキツバタが辛い時に一緒に居なかった謂わばポッと出に見えたのだろう。ヒスイは気性の荒いポケモンが多いらしいし、喧嘩腰になってもおかしくなかった。
    「はぁ〜〜〜、こんなことになるとは。ブリジュラス達も今日はもう戻れぃ」
    カキツバタにとっても予想外だったみたいだ。「まあ全部オイラが悪いな……」と落ち込みながら全員にボールに戻ってもらっていた。
    考察してた俺はハッとして、皆と共に駆け寄る。
    「大丈夫だったかカキツバタ」
    「怪我とか」
    「へーきだけどよぉ…………」
    ガチ凹みだ。言葉にならないくらいカキツバタは凹んでいた。ただただポケモンと会うのを楽しみにしていただけなのに、なんというか、可哀想だな……
    「…………ガブリアス達にとってはこの地自体が知らぬ場所だ。少しずつ慣らしていく他無いだろうな」
    「とりあえず、馴染むまであまり一緒の空間には居させない方がよいかもしれませんですね……」
    「うん……なんか、ごめん。また迷惑掛けるかも」
    「気にしないでくださいよ。皆ツバっさんが大好き過ぎるだけみたいだし」
    「全員カキツバタが信頼するポケモンだろ?直ぐにとは行かなくても、絶対大丈夫だべ!」
    本心から励ましの言葉を告げれば、弱々しく頷かれる。
    前途多難だな……コイツを元気にするにはポケモンが一番かと思ってたのに。上手く行かねえべ。
    「とりあえず、この子達は引き続きリーグで面倒見ますから。ツバっさんは今まで通り回復に努めてください。ね?」
    「…………ん。頼むわ」
    あんまり背負い込み過ぎるな、とシャガさんとハッサクさんが頭を撫でる。
    貰った時間はまだ残っていたものの今日はもうこの子達を出すべきではないだろうってことで、ボールはハルトとハッサクさんに渡し、俺とカキツバタとシャガさんは病室へ引き返したのだった。
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    Rahen_0323

    MAIKINGカキツバタが居なくなる話六話目です。完全シリアス。捏造過多でなんでも許せる方向け。
    シリーズなので「アレは死んだ(一話)」「SOS?(二話)」「堪えた悲鳴(三話)」「円盤(四話)」「王者(五話)」から読むことをオススメします。
    気付いたらこのシリーズ一ヶ月止まってたらしいです。申し訳ねえ。色々間違ってないか不安になりながら投稿してるので後から修正入る可能性があります。
    愛と後悔「先ず、一番重要な点から伺います。……カキツバタくんは、死んだんですか?」
    僕が念の為覚悟を胸に静かに問うと、スグリが怖い顔になり、アカマツくんがギュッとフライパンを握り締めた。
    アイリスさんはそんな僕達を順に見て、言葉を選ぶように暫し沈黙して考え込む。
    数分にも数時間にも感じた静寂が過ぎ去った後、飛んだ答えはこれまた不可解だった。

    「私も、死んだのだと聞かされました。でも生きてると思う」

    僕達三人は視線を交わらせる。
    そんなアイコンタクトには気付いているのだろう。イッシュの女王は大きく息を吐き出して続けた。
    「ご存知か分からないけど、私はソウリュウシティの出身でもドラゴン使いの一族の生まれでもないの。竜の里という場所から来た、所謂"余所者"。お祖父ちゃんの後継者だからって、そこは変わらない。だから……一族の仕来りにはまだあまり詳しくなくて。関わることが無かったわけじゃないけど、仲間外れにされることも多いの。あくまで"後継者"で本当に当主になる日も決まってないから、尚更」
    3010

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