狙われてますよ、お姉ちゃん「つっ………かれたぁ……」
僕は珍しく道路のブロックに腰を下ろす。今日は荒々しい仕事だった。3行で説明すると、
ベストジーニストと協力して不正アクセスしてたヴィランを探しました。
見つかったので確保する為にアジトに乗り込みました。
近所の警備会社から盗んだ警備ロボを暴走させたので壊して壊して壊しまくりました。以上。
くっそ余計なことしやがって。最後の最後に暴走させなければ別件でチームアップしてたエンデヴァーと啓悟に応援頼まずに済んだのに…。
「お疲れ、朧」
「お疲れ様ですベストジーニスト…申し訳ありません。このような荒事になってしまって…」
「君のせいではない。気にするな」
「…僕がもっと戦闘向きな個性だったら、ベストジーニストに苦戦させたり応援頼まずに済んだのに…」
「あれだけの量だ。例え君がもっと戦闘向きの個性であっても応援は頼んださ」
「むぅ……公安として不甲斐なし…穴があったら入りたい…」
「よもやよもやだな」
「まさか鬼◯の刃読んでるんですか?」
「ジャン◯の漫画はホークスに勧められてよく読む」
勧められた漫画ちゃんと読んでくれるんだ……優し…今度僕もおすすめの漫画の話したいな…。
「お2人さんお疲れさまでーす。いやー大変でしたね、壊しても壊しても出てくる警備ロボ!モグラ叩きのハード版みたいでしたね!」
「お疲れ啓悟…元気だね……」
「まぁお2人さんが結構倒してたので、俺はそんなに疲れてないですねー。さすがNo.3と公安のエース!」
「エースって言うのやめて…僕そんな凄くないから…凄いのベストジーニストだから……」
「謙遜は良くない。君も頑張っていた」
「そうそう!頑張った頑張った!えらかねー」
「2人して頭撫でるのやめて…」
甘やかすな…今甘やかされたら幼児退行しそうだから甘やかすな……やめて…バブりそう……。
「……何をしているお前ら」
「エンデヴァー…エンデヴァー助けて……塚内さんでもいいので…助けて…バブりそうなんです…」
「バ…なんだ?」
「君にわかるように言い換えると『幼児退行しそう』って意味だな」
「頑張った公安のエースを労ってたところです!」
「ははは、仲良いね君たち」
ベストジーニスト頷かないで…撫でるのやめて……エンデヴァーと塚内さんの目が痛いの…やめて…。
「楽しそうなところ悪いんだけど、確認したいことがあるんだ。いいかな?」
塚内さんが仮設テントを指差す。ようやく2人が撫でる手を止めたので、僕はすかさず立ち上がった。
塚内さんが救世主に見える…。
「…よし、これでいいだろ」
諸々の確認を終え、ようやく仕事が終わる。今何時?夜中?はー疲れた。それに眠い。もう荒事はしたくない。眠気覚ましにコーヒーでも飲もうか…自販機は…喫煙コーナーの近くだっけ?
疲れ切った足を動かし、自販機を目指す。歩くのも億劫だ…あとめっちゃ眠い……頑張れ僕…あとちょっとでひと息つけるんだから。
ほんの数メートル先の自販機にやっとの思いでたどり着く。と、塚内さんもやってきた。
「塚内さんも…何か飲まれます?」
「ん?いや、僕はあっち」
あっちと指差す方には灰皿があった。なるほど。一服吸われますか。僕もそっちにしようかなぁ…普段は人前で吸わないんだけどね…今日だけは耐えられないわ…。
「……僕もご一緒していいですか?」
「もちろんいいよ、行こうか……ふらふらしてるけど大丈夫かい?背負ってあげようか?」
「いえ結構です」
さすがにそれは恥ずかしいので遠慮します…。
軽口を叩きながら喫煙コーナーにたどり着く。はぁ……ようやく休憩だ…タバコタバコっと…。
「マイセン派なんだ。似合うね」
「塚内さん…今はメビウスって言うんですよ…?」
「…君、今遠回しに『おじさん臭い』って言った?」
「気にしすぎでは?塚内さんは…セッターですか……へぇ…」
「やっぱり『おじさん臭い』って「言ってないし思ってないです」
めっちゃ気にしてるじゃないですか…まだそんな気にする年齢ではないでしょ…え?ジーニストを見ると気にするって?あの人はほら…美意識の塊みたいな人ですから…。
「はぁ……しみる…」
タバコに火をつけ、煙を吐き出す。体に悪いってわかってるんだけどね…眠気覚ましにちょうどいいんだよね…良い子は吸わないようにね?僕との約束ね。
…あれ?塚内さんタバコ吸ってない?
「塚内さん吸わないんですか?」
「いや…ライターが切れたみたいでさ…火が…」
「あらら…ガス欠ですか……僕の使います?」
「ありがと。カッコいいの使ってるね」
「いいでしょ…それ。数量限定…エンデヴァー&ホークス……コラボモデルのオイルライターです。幸運にもゲット…できました」
「ホークスに貰ったとかじゃないんだ?」
「貰ったら…貢献もアピールもできないじゃないですか…買ってエンデヴァーと啓悟に…貢献すると共に『こういう商品は需要がある』って…アピールするんですよ。貰ったら貢献もアピールも…できないじゃないですか」
「真顔で2回も言うことかな?」
「重要なことなので…テストに出ますよ…二重線引いておいて…ください」
「君だいぶ限界だね?時々寝かけてない?」
「睡魔が酷くって…あれ?オイル切れましたかね?」
「かもね…………いっそエンデヴァーに着けてもらおうか…」
「No.1を…ライター扱いできる人…なんて…塚内さんくらいでは?」
そういえば最近忙しくてライターのメンテナンスしてなかったなぁ…それにしてもタイミング悪いな…もう1回ぐらい頑張れよ…Plus Ultraだろ?限界を越えろよ。ライターの火が着かないとエンデヴァーがライター扱いされてしまう。うわぁ…エンデヴァー絶対怒るのでは…?えー…どうしよ……………………あ、そうだ。
「おーい、エンデ「塚内さん塚内さん」…ん?何だい?」
「ん」
あっぶな。エンデヴァー呼ぶの早いですよ塚内さん。間一髪で止めれてよかった……えっと確か、タバコを咥えて先をくっつけるんだっけ?僕は塚内さんにタバコの先を差し出した。塚内さん知ってるかな?
「ん?…………ああ、なるほど」
シガーキスというらしいよこれ。実際にするのは初めてだけど、これ絶対誤解されるやつだよね?あとすっごい恥ずかしい…おいタバコ、早く着いてよ。塚内さんの顔が近くて恥ずかしいんだよ…待って塚内さんこっち見ないでください。ニヤニヤしないで?…あ、着いた。僕はすぐさま塚内さんから離れる。
「ありがと、助かったよ」
「……お気になさらず」
「あれ?朧?顔赤くないか?熱でも出た?」
「…赤くないです……塚内さんわざと言ってるでしょ」
「何のこと?」
「顔が…笑ってるんですが?…絶対わざとだ」
「ははは」
塚内さんは笑いながら僕の頭を撫でる。これが大人の余裕…?いや自分でも大胆なことしたのはわかってるけどさ…いや違うんだよ…眠くて正常な判断ができないだけなんだよ…まぁ塚内さんなら嫌じゃないしいいか……。
「ちょっとちょっとちょっと塚内さん!?お姉ちゃんになんばしよっと!?」
「何と言われても、火を着けてくれたから感謝してるとこだけど?」
「感謝のやり方が違法デニムだ。セクハラで訴えるぞ?」
「違法デニムって何?というか君が訴えるのか?」
ベストジーニストと啓悟が怒り心頭だった。さっきのシガーキスが不味かったんだろうなぁ…エンデヴァーの怒りを回避する予定が大幅に狂ってしまった。本気で頭回ってないなこりゃ。
「だいたいお姉ちゃんもお姉ちゃんばい!?あげなことして!!」
「いや…塚内さんなら…嫌じゃないし…いいかなって思って……あと…エンデヴァーが……ライター扱い…されそうだったから…」
「塚内さんなら嫌じゃない!?それどげん意味!?ねぇお姉ちゃんそれどげん意味!?」
「ごめん…眠くて…正常な思考ができない…」
思考回路は眠気でショート寸前なんだ…今すぐベッドに会いたいよ…。
どうやらタバコでも眠気は止まらないようなので、僕はタバコを灰皿でもみ消した。危ないからね。それにしても本当に睡魔がヤバいな…これ無事に帰れるかな…。
「ねむい……ねむいぃ…」
「お姉ちゃん目擦ったらいかんよ?可愛いけど。眼球に傷がつくばい?目擦っとるとこ可愛いけど」
「ホークス、本音が漏れてるよ?まぁ確かに可愛いけど。朧、家まで送ろうか?」
「塚内お前どさくさに紛れて何を言っている。本気で訴えるぞ」
「んー…………つなぐさん…おくってぇ…」
「は?何でジーニストさん?俺じゃなかと?俺もお姉ちゃんの家どこか知っとるよ?」
「けいご…えんでばーのいえ……いくとやろ…ぼくんちと……ほうこう…まぎゃくばい………それに…つなぐさんには……おくりむかえ…たまにしてもらっとーけん…」
「うわぁ……ドヤ顔腹立つ…」
「大人気ないな…No.3のくせに…」
「何か言ったか?」
3人がなんか言ってるけど、僕はもう限界だった。立つのも辛い……いっそ倒れてしまおうか…誰かキャッチしてくれるでしょ…。
「貴様ら何を騒いでいる。終わったならさっさと帰るぞ」
「えんでばー……」
「…朧、大丈夫か?」
「だいじょうぶ…じゃ…なかです……めちゃくちゃねむいです…………えんでばーのちかく…あったかかね……」
「…もう寝てしまえ。帰りは送ってやる」
「いえのほうこう…まぎゃくばい………」
「そんなこと気にするな。寝ろ」
「んん………」
ふらふらしてたらエンデヴァーに抱えられてしまった。腕一本で抱えられてるのに安定感すごい。それに温かい。あーこれは寝る…絶対寝る…啓悟ごめん…エンデヴァーお借りします…。
「俺は先に帰るぞ」
「エンデヴァー、彼女は私が送ろう」
「そうか。では…………いや無理だな。がっちりホールドされていて剥がせん」
「………では、よろしく頼む」
「どんまい、ジーニスト」
「やかましい」
結局僕はエンデヴァーに送ってもらったらしいけど、家に到着してもエンデヴァーから離れなかったので、そのままエンデヴァーの家に泊まらせてもらったらしい。次の日めちゃくちゃ土下座した。
「左に俺、右にお姉ちゃんって、両手に花でしたねエンデヴァーさん」
「何が花だ。一晩中寝返りが打てなかった」
「誠に申し訳ありませんでした…」
疲れた日はさっさと帰った方がいい、ということを学びました。(小並感)