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    bhrnp

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    bhrnp

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    クロアイ初夜の後。

     あれは何だったのだろう。

     夢と現の最中、ようやく形を取り戻したように思えたその瞬間、冴えた視界と思考の中、精一杯に思い出そうとしても何も解らなかった。
     何かを、与えられていたのは感じた。溢れ出て受け止めきれない程の「それ」の代償は、鈍い痛みと倦怠感。
     己の放つ濁った水音と、高く耳障りな嬌声と、男の慈しみに満ちた顔と痛覚を突き破るほどの白く眩い閃光と、歌を口ずさむ時よりもずっと余裕を失った雄誥が、耳から脳へ、焼き付いて離れない。



     壊れ物の様に扱われるのは本意ではないだろう。そうは思いつつも、大事にすると決めたから。経験値が足りないのも相俟って、尻込みして臆病風に吹かれ合って、ようやく身体を繋げるに至り、そしてその朝から顔を合わせていない現状。
     無理をさせたのだろうと数時間考えて送った気遣いのメッセージには、既読以上の返事はなく、暫くしてから練習で集まっても、数メートル以内に寄って来ない始末。
     何かは知らないけど、とんでもなく怒らせているのか、または怖がらせているのか。想い合う仲の最骨頂の儀式まで済ませておきながら、恋人どころか翌日から同じバンドに属するだけの関係になっていて、このまま自然消滅コースとしけこみそうな雰囲気で。
     せめて会話をしようと思うのに、自分はどうやってヤツに言葉を切り出していたかさえ分からない。恐らく、言い掛かりと難癖と変な矜持で出来ていたんだけど、それすらもマトモに機能しない。喧嘩をするほど仲が良いってのは言い得てだ。嫌いや憎いと思うのも、一続きの縁があって初めて出来る所業。

     ならば、オレ達は今、他人なのかも知れない。


    「オレそんな下手だったのか……?」
     出て来る結論に自信を失って、自分で言っときながら余計に落ち込んだ。
    「ギターの腕か? 下手という程ではないが、極めて上手という訳でもなし」
    「馬鹿正直に星3.7くらいのレビューしてんじゃねぇーよ真面目か」
    「ゆ、ゆえ……」
     真面目だった。見る間に落ち込みが伝染したヤイバに申し訳なさが募る。でも、己の気は晴れないし疑問だって解けない。
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