ホワイトデーゾロユリ　肌を撫でていく風も日を増すごとに柔らかくなっていく。日差しは白っぽく、空も冬の鈍色の雲は消え、霞む青が見られるようになっていた。街を歩く人々は自分と軽装になり、女たちはまだ肌寒いだろうに、随分と薄着で出歩いている。
　祖国に比べれば随分と早い春の訪れだ。先程まで行われていた商談がうまくいったこともあり、ゾロトフは鼻歌の一つでも歌いたい気分になっている。もっともそんなことをしようものなら隣を歩く幼馴染に思い切り顔を顰められるだろう。年を考えろだとか、人の目を気にしろだとか、そういう細かいことを色々口に出されるに違いなかった。
「随分と楽しそうだな」
　鼻歌を歌わずとも、相手には十分こちらの機嫌の良さが伝わってしまったようだ。「まあな」と返しただけで軽く溜息を吐かれる。
「そういうおまえは随分と虫の居所が悪いようだな」
「何もないのに笑えないだけだ」
　まあ、そんなものか、とゾロトフは一応納得した。他人の機微を自分の思った通りにしたいわけではないのだ。
　商談の内容は面白いくらいにゾロトフの望む方向へと転がっていった。こちらが何か罠を張ったり、脅したりということもなく——相手が間抜け極まるやつだったというだけだ。勝手に引っかかって、勝手に転び、ゾロトフに幸運を投げて寄越した。こんな偶然は二度とないだろうと思えるほどだ。
「じゃあさっきの篠山の顔でも思い出してみろ。ちょっとは笑える気分になるだろ？」

顰め面から徹底した無表情になり、にこりともしないユーリ
ゾロトフにはそれが彼の強がりだと知っている。基本的に彼は感情を顔に出さないように努めているのだ。
徹底した無表情の男と、何が楽しいのかへらへらと笑っている自分。すれ違う人々からは隠しきれない好奇の眼差しを向けられた。膚の色も目の色も異なる異国の地にいるというだけで人目を惹くし、更に二人でいるのに対称的となれば目立つのも仕方がなかった。人の眼差しは、廻りと違うものに自然と向かいやすい。




街歩き


スタバみつける
ゾロトフが店前の看板見つけて立ち止る
ユーリも止まらざるをえない
店の前の看板は青と黄色・チョコレートが踊っている
桜終わってチョコレート→順番が逆じゃないかと思うゾロトフ
（先月こそバレンタインがあったのだから、その時にチョコレートを出せばよかったのでは）
↑をユーリに振るゾロトフ
「先月は先月でやっていた。たしかバレンタイン商品だったはずだが」
「へえ、知らなかった。随分こまめに見てるんだな」
「たまたま通りかかった時に見ただけだ」
「この国じゃバレンタインデーにチョコレートっていうのが定番らしいが、コンビニに行っても冬の方がチョコレートコーナー充実してるよな。こっちじゃ冬にチョコレートを食べるもんなのか？」
「……バレンタインデーがあるからそれに便乗してチョコレートを売っているだけじゃないのか？」
「……あれだな、卵が先か鶏が先かって問題に似てるな」
「そこまで大それた問題か？」

「折角だし飲んでいくか——そんな分かりやすく嫌そうな顔するなよ。何もこれ飲めって言ってるわけじゃないんだ」

二人が店に入った瞬間ｻﾞﾜｯとなるカウンターの向こう側。
ユーリは仏頂面（ある意味慣れているともいえる）

ユーリが先に注文する（日本語）
店員が「お連れ様はいかがされますか？」

ついったの注文のやつを思いつくゾロトフ

不機嫌になったユーリ気遣って外に行くかと提案するものの、突っぱねられて結局店の中で飲む

視線が集まる集まる

日本語で話すかロシア語で話すか悩む
→ロシア語ならこの場にいる人間に話を聞かれる心配はない（英語ならいざ知らず、この国でロシア語をしゃべれる人間はまずその辺にはいない）
　日本語ならここでもユーリに嫌がらせができる（レジではロシア語しか話せないふりをしていたので、ここで日本語で話しかえれば「さっきもそうすればよかったんだ」くらいのあてつけは帰ってくるだろう）
　あとは日本語で話せば、わざと周囲に誤解を与えるような話もできる。