帰宅後は甘い一時を「(あ…、結構降ってきた)」
大量の小さな雨粒が、電車の窓に打ち付けられているのが見える。ぽつり、ぽつり。最初はそのくらいの程度だったけど、瞬く間にその数は増えていった。今傘を指さずに外を出歩けば、たちまちびしょ濡れになるだろう。
「(駅のコンビニに、まだ残っていると良いんだけど)」
今日は朝から天気の良い日だったから、突然の雨に慌てて傘を買い求める人は多い。特に荷物も無いならまだ構わないけれど、生憎今日は数個荷物を持っている。己の運を信じる他無かった。
あと数分で駅だ、と言うタイミングでスマホが小さく震える。通知には、己の恋人からのメッセージが届いていた。
『駅で待っていろ。』
ただ、それだけの言葉。この一言で、恋人が迎えにきてくれるのだと理解出来た。立香はほっと胸を撫で下ろし、『分かった。ありがとう。』と返信する。既読は付いたが特に返信が来ることはなかった。既に準備を初めているのだろう。
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