Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

    置いているものは順次くるっぷへ移動します。
    Tumblerもあるのでお好みで。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 👏
    POIPOI 83

    105@海自艦擬人化

    ☆quiet follow

    3番艦進水祝い。173+①

    #擬人化
    Humanization
    ##本編

    前を歩く背中に 梅雨の真っ只中にも関わらず、祝いの日が雨天にならなかったのは幸いだ。本格的な夏の訪れが近いのだろう。薄く差す日差しにじっとりと湿気をはらんだ空気に汗がにじむ。観客を入れない会場に子供の姿は目立つ。それゆえ今回は式典の方をあさひに任せて自分はもがみの付き添いとして裏側からだ。
     朝、騒がないことと言いつけた通り静かに様子を見守っている。いや、これは普段と違うしんとした構内に緊張しているのか。快活さは影を潜め、暑さにも関わらずぴたりとくっついている。差し出した手をぎゅっと握り返す手の小ささに改めて思う。しっかりと振る舞うこの子とて、まだ3月に進水したばかりなのだと。
    「おれ、兄ちゃんになれるかな」
     命名式が滞りなく終わり、幕の向こうでは粛々と進水準備が進む。そんな中ぽつりと呟かれた言葉はよく通った。間を置かず大丈夫だと返す。
    「焦る必要は無い。それに、兄だからといって我慢しなくていいんだからな」
     そう言いつつ繋いでいない方の手で柔らかな髪をくしゃくしゃと撫でる。されるがまま身を任せている内に不安が落ち着いたのか小さく笑い声も漏れる。鳥の巣の様になってしまった頭を見、ひとしきり笑いあったところでカンッと乾いた音が響く。慌てて2人揃って顔を会場へと向けた。
     無事式典が終わったのを見届け一息付いていると、今日の主役が駆けてくるのが見えた。真っ先ににいちゃ、と呼び掛ける言葉はまだたどたどしい。それに応えるもがみは少し驚き、そしてとても嬉しそうな顔で一回り小さな体躯を抱き止めている。
    「進水おめでとう、のしろ。これからよろしくね」
     きゃあきゃあと騒ぐ子供らを前に今年の夏は賑やかそうだと顔を綻ばせた。健やかな成長を願って。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏🎉🎈
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
    1383

    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
    703

    related works

    recommended works