向こう側の顔キュッ、とシューズが床を鳴らす。ボールがフワリ、と浮かんだかと思えば目にも見えない速さでダンッと床に叩きつけられる。
湧き上がる歓声も、飛び交うボールも全てが見慣れた光景。そしてネットの向こう、その中心に立つ男もまた見慣れた顔。
そのはずだった。
「ワンさん!」
ドッと勢いよく放たれたボールをワンさんと呼ばれた人物がすくい上げる。
宙に浮かび上がったボールの下に金色の髪が揺れる。
「侑さん!」「ツムツム!」「宮!」
男の手に吸い込まれたボールは一瞬、時が止まったかのようにピタリと静止した。
次の瞬間、伸ばした手をすり抜けたボールは気づいた時には背面の床を叩き大きく跳ね上がっていた。
チームメイトからは様々な名で呼ばれているようだが、あれは自分のよく知る人物のはずだ。“宮侑”は10代の3年間を共に過ごしたチームメイトで見飽きるほど見た顔だった。確かにそのはずなのだが。
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