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外はバケツをひっくり返したような雨が降っていた。
真斗はどうせタクシーに乗るなら家まで帰ればいいだろうとゴネたが、こっちのほうが近いんでと押し切られて春日たちの溜まり場の店に向かうことになった。
車から降りて小走りに店へ向かう。まだ店はやっているようで、ようマスター、と勝手知ったる足取りで春日が入店し、真斗もそのうしろからドアをくぐった。レコードの柔らかい音が雨音と混ざって、落ち着いた雰囲気の店だ、と思った。
「おう、春日。雨すごいな。誰も来ねえしもう閉めようと思ってたとこだ」
「ほんとすげえ雨だぜ〜。二階泊まってっていいか?」
「ああもちろん。俺はもう帰るからよ、どっか行くなら戸締りしてくれ」
「了解。さ、若、こっちです」
2030